まともに走れない……一部ドライバー襲った突然のグリップダウン。あの時何が起きていた?|スーパーフォーミュラ第3戦
鈴鹿サーキットで行なわれたスーパーフォーミュラ第3戦では、一部のドライバーが極端なタイヤのグリップダウンに見舞われた。当時の状況について、ドライバーやエンジニアに話を聞いた。
写真:: Masahide Kamio
松下信治(B-Max Racing Team)、野尻智紀(TEAM MUGEN)、牧野任祐(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)による緊迫した優勝争いの末、松下が勝利を手にしたスーパーフォーミュラ第3戦鈴鹿。雨の中展開された、上記3者による終盤の戦いはもちろん印象的だったが、レース前半に一部のドライバーが突然のペースダウンに見舞われた点もある意味印象的であった。
2番グリッドスタートの山下健太(KONDO RACING)もそのひとり。彼はスタートで2番手をキープしたものの、5周で野尻との差が10秒に広がるなどペースが上がらず、そこから4番手までポジションを落として12周目にピットイン。タイヤを交換した。今回のようにウエット宣言が出されているレースではタイヤ交換義務がないため、ピットに入った山下は一気に不利な状況となり、16位でレースを終えた。
「スタートして2、3周でペースのドロップが大きかったので、チームと相談してピットに入りましたが、ダメでした」
山下はそう振り返る。ペースが落ちていたとは言え、そのままステイアウトしていれば少なくともポイント圏内でフィニッシュできたのでは、との問いには、こう答えた。
Kenta Yamashita, KONDO RACING
Photo by: Masahide Kamio
「ピットに入らなくても、ペースのドロップが大き過ぎて10番以内に入れたかどうか分かりません。なぜここまでタイヤに厳しかったのか分かりません。びっくりするくらいのドロップでまともに走れませんでした。ただ、そうなっていない人もいるので、その原因を探らないといけません」
そんな山下以上に大幅なペースダウンに見舞われたのが坪井翔(P.MU/CERUMO・INGING)。坪井は序盤に4番手を走行していたが、10周目前後から周りよりも5秒以上遅いラップタイムとなってしまい、瞬く間に下位集団にまで飲み込まれてしまった。彼は山下と同じく12周目にピットインしたが、タイヤ交換のロスなどもあり最終的に20位に終わった。
坪井はあまりに突然に大幅なグリップダウンに見舞われ、走行を続けることすら恐怖を感じるほどだったため、ピットインを選んだと語る。
「突然グリップを失い、ドライバー側ではどうにもできないくらい、ペースが落ちてしまいました」
「コース上にいるのも怖いくらいでした。後ろから来るドライバーの邪魔にならないように走っていましたが、それも難しいくらいタイヤが終わっていました」
「その一方でペースが落ちなかった人もいるので、車両側にも何かしら問題はあったのかもしれません。ただ、路面がウエットからドライに変わるコンディションなら、ウエットタイヤでガクンとペースが落ちるのも分かるんですが、普通にウエットの状態でああなるのは……」
予定外のピットインを強いられた山下や坪井とは対照的に、ランキング2番手の平川亮(carenex TEAM IMPUL)は12番グリッドから追い上げのレースを見せて7位フィニッシュを果たした。しかしそんな平川ですら、今回のタイヤに不可解なグリップ不足を感じていたという。
「朝(日曜フリー走行)はすごく調子良くて、まだまだ行ける感覚があったんですけど、午後にタイヤを替えたら振るわなくなりました。おかしいと思っていたので、グリッド上でタイヤを交換したくらいです」と平川は言う。
「でもフォーメーションラップからタイヤがグリップしていない感じがして、1周目もグリップしないし、最後の5周はタイヤが残っていませんでした」
Ryo Hirakawa, carenex TEAM IMPUL, Toshiki Oyu, TCS NAKAJIMA RACING
Photo by: Masahide Kamio
今回のレースでは上位に入ったドライバーも含め、多かれ少なかれフロントタイヤを中心にタイヤマネジメントを求められていたのは確か。ただ、なぜこうにも顕著な差が出たのだろうか?
坪井を担当する菅沼芳成エンジニアに話を聞くと、彼は「ライバルにヒントを与えてしまうので……」ということで多くを語ろうとはしなかったが、今回のペースダウンの原因は大方見当がついているようで、次のように分析した。
「(原因は)みんな大体同じだと思います。今回ピットに入った車両は、(自分たちと)同じことが起きていると思います」
「ドライバーのドライビングはあまり関係ないと考えています。僕たちのタイヤの扱い方が合わなかったのだと思います。このまま雨が降ると読んだか、雨が止んでいくと読んだか……それで大きく変わります。僕たちは雨が降る方に寄せ過ぎちゃったと思います。あの時(坪井がペースダウンした時)から雨量は少なかったですからね」
これら一連のグリップダウンの原因は、未だハッキリとしていない。しかし、少しのセットアップ変更、各種調整が大きな違いを生むというスーパーフォーミュラを象徴する出来事だと言える。
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