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スーパーフォーミュラの改革は話題づくりだけじゃない。さらなる発展に不可欠な“制度整備”……ハンドボールリーグ元事務局長が荒地を耕す

近年のスーパーフォーミュラはさまざまな施策で注目度を高めようとしているが、それと並行してプロスポーツとしての様々な制度を整備する動きも進んでいる。

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 スーパーフォーミュラの改革は、確実に実を結びつつあるように見える。運営団体の日本レースプロモーション(JRP)は2021年の“NEXT50”プロジェクト発足以来、レース界で最も知名度が高いとも言える近藤真彦氏を会長に据え、PR活動を展開。さらには人気アイドル、日向坂46の富田鈴花をアンバサダーに迎えたり、ABEMAでの無料配信を開始したりと、外向きの施策を積極的に行なった。その結果、2024年の観客動員はシリーズが現在の名称となった2013年以降で最多となったのだ。

 しかしながら、JRPも話題づくりだけに執心しているわけではない。JRPが目指しているのは昨年をはるかに上回る水準の動員であり、そのためにはプロスポーツとしての組織体制の整備としっかりとした制度設計も同時並行的に求められる。そこで彼らは他業界から人材を獲得した。それが松井隆氏だ。

 松井氏は、40代前半の若さで日本ハンドボールリーグの事務局長を務めた人物。ハンドボールという決してメジャーではないスポーツ競技を盛り上げるべく、制度設計や事業拡大に取り組んできたが、昨年8月から社長付の事業推進担当としてJRP入りし、まずは現場に足を運ぶことで現状の課題の把握に努めた。そして今年からは事業管理部長としてその手腕を振るうことになる。

JRP松井隆氏

JRP松井隆氏

写真: Motorsport.com Japan

 松井氏は昨年から中長期のプランを練りながら、KPIやKGI……いわゆる事業における評価指標や目標をどこに設定するかの整理整頓を行なっている。諸改革が進み始めたばかりのスーパーフォーミュラであらゆる制度設計づくりをすることは、まさに荒地を開墾して耕すような作業になっていくと考えられるが、松井氏はハンドボール時代の知見を活かしてどんなことに取り組もうとしているのか? 彼はこれについて“競争環境”という単語を用いて以下のように説明した。

「スーパーフォーミュラを主催する立場として世界マーケットを考えた時に、F1のシートを獲得したいドライバーに対して『ここに来ると(F1参戦に本当に必要な)自身のドライバースキルが試される』『ここに来るとドライバーとして注目されやすい』という環境をどう整備するかがひとつ。一方でスポンサーがつきにくいといった現状もありますから、そういった点も含めてドライバー、チームの競争環境である競技環境だけでなく、それらを主軸にした事業環境も並行してどう作るかですね」

 競争環境という言葉は日常的に聞き慣れたフレーズではないが、松井氏は競争環境を作るための例を挙げつつ、こう続けた。

「ある一定要件を作って、この要件を満たさないとチームは参加できないというライセンス制度のようなものを導入してあげると、競争環境ができやすく相対的にチームの成長ための目標設定にもなると思います」

写真: Masahide Kamio

「ただ、モータースポーツ界にどういう制度設計が合うのかというのはまた別の議論になりますが、仮にフルグリッドが埋まった状態で新規参戦を希望するチームが現れた時に、この人たちをどう参入させるのか、もしくは既存のチームとどう競ってもらうのかというのは、制度設計上想定しておく必要があると思います。例えばアメリカのNASCARでは、チームが株や権利を持っていて、辞める時それを売って投資に対する効果(いわゆる儲け)にすることができたりします。これこそ、競争環境と事業環境の連動です」

 そういったチームの新規参入などシリーズにおける現状の意思決定プロセスには、松井氏も疑問を持っている部分がいくつかある様子。既存チームの意向ばかりが優先されるのではなく、ファンの目線やビジネス的視点が“感情論抜き”でしっかりと反映されるべきだとの考えのようだ。

「率直に言えば、その時々のチーム全体の合意で物事が決まり過ぎている感はあると思います」

「それが社会的に良いものなのか、そもそもファンのニーズにかなっているのか? という部分があるので、この辺りの整理は絶対的に必要だと思っています。私たちは株式会社なので、コーポレートガバナンスも踏まえて取締役会の権限とのバランスも考える必要があります」

「例えば、(スーパーフォーミュラで)ビジネスをしたいと言ってきた人たちが『ビジネス寄りの仕事をする人間は、レース界にとって悪だ』と言われてしまうと、排除されてしまいますよね。でもこれって本当にそうなのか? ということを冷静に判断する会議体などの整備、つまりガバナンス上の意思決定の主体を再確認することが必要だと、この半年痛感しました」

「“決めることの決め方”、つまり判断軸を持って物事を動かすことが大切だと思います。その判断軸はお客さんが喜ぶことや、ドライバーが夢を持って、かつ安全に走れること、そしてそれによって環境が整い、サスティナブルな事業運営がおこなわれること。『あいつを入れるとトラブルになるから入れない』ではないんです。そこはプロモーターとして教育すればいい話ですから」

「これまでの関係性の中で難易度が高いことであるとは理解していますが、やはりビジネスをするのであれば、そういう感情論を抜きにした、どうしたらスーパーフォーミュラが発展するのか、憧れる場所に進展していくのかという純粋な議論がまずは必要かなと私は思っています」

写真: Masahide Kamio

 人々に夢を与えるプロスポーツへ——。松井氏が目指すのはそこだ。その実現には土台となる環境の整備は欠かせず、そしてそのためにやるべきことは、決して一元的ではない。マーケティング部の動きに連動した制度づくりや、放送事業部に関連した権利と使用料に関する規程類の新設、開催サーキットとの連携、そして資金繰りの調整……常人ならパンクしてしまいそうなマルチタスクに、彼は取り組むことになる。

「満遍なく、まずやるべきことは何か、何と何がどう関連、連動しているのかという“カオスマップ”(企業や製品などをカテゴリー分けして一覧にした図)のようなものを作って取り組んでいくことになるでしょうね」

 そう語った松井氏。地味な仕事かもしれないが、スーパーフォーミュラがプロ野球やJリーグ、Bリーグなどと並んで語られる存在になるためには、避けては通れない道だ。またひとつ、スーパーフォーミュラの重要なピースが埋まろうとしている。

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