“みんなで戦う”スーパーフォーミュラと“ひとりで戦う”ボートレース。好対照な側面を互いに尊敬「現実突きつけられる」「仲間の思いを背負うのは大変」
スーパーフォーミュラとボートレースは、互いに動力源の付いた乗り物で戦う競技であるものの、様々な点で違いがある。両者のコラボイベントに参加したレーサーたちは、お互いの競技にリスペクトを示した。
写真:: Motorsport.com / Japan
先日、東京・六本木で開催された、スーパーフォーミュラとボートレースのコラボイベント。どちらもエンジン(ボートレースではモーターと呼ぶのが一般的)が付いた乗り物に乗った“レーサー”によって競われる競技だが、実は対照的な側面も持ち合わせる。その違いについて、イベントに参加したレーシングドライバーの阪口晴南と笹原右京、ボートレーサーの仲谷颯仁と毒島誠に聞いた。
今回のイベントが実施されたのは、スーパーフォーミュラを運営する日本レースプロモーション(JRP)とBOATRACE振興会がパートナーシップを締結したことによるもの。両者の関わりは昨年からスタートしており、ボートレースはスーパーフォーミュラの会場でブースを出展している。またボートレースのレース中継などに、スーパーフォーミュラ参戦中のドライバーが度々出演するなどしている。
BOAT RACE振興会はmotorsport.comの取材に対して、ボートレースは公営競技でありながらも“プロスポーツ”としての認知を広げようとしており、そのためにもスポーツ界との協業は必須であったと話していた。
正式なパートナーシップの締結により、スーパーフォーミュラとボートレースの交流は今後ますます増えていくことだろう。今回のイベントに参加したレーシングドライバーとボートレーサーは車両展示やトークショーを通じて、競技性質の違いなどに触れて驚きを隠せない様子だった。
対照的な重圧
先にも述べた通り、スーパーフォーミュラとボートレースは共にエンジンの付いた乗り物に乗って競争するため、道具の良し悪しが競技結果に影響する。その中で好対照な違いと言えるのが、その“道具”を速くするためのプロセスだ。
スーパーフォーミュラはコンマ数ミリ単位の違いがパフォーマンスを分けるが、その中で車両を精度高く組み上げるメカニック、適切なセットアップを考案するエンジニア、そしてドライビングフィールを的確にフィードバックするドライバー……その全てがうまく噛み合わない限り、速いマシンは作れない。つまり個人競技のように見えてチームスポーツなのだ。
一方でボートレースは、完全な個人競技と言って差し支えないだろう。モーターやプロペラなど、ボートの調節を全てボートレーサーひとりで行なうのだ。大会ごとに抽選によって供給されるモーターも同一仕様とはいえ、多かれ少なかれ個体差がある。毒島曰く、“良いモーター”を引いた時は整備がいらないが、そうでないモーターを引いた時にレーサーの整備力がモノを言うのだという。
どちらの要素も、それぞれの競技の魅力であり、難しい点でもあるだろう。レーシングドライバーもボートレーサーも、互いの競技特性にリスペクトを示した。
スーパーフォーミュラ界きってのボートレース好きである阪口は、自らの競技結果の責任を全て負うボートレースは、その分自分の実力を残酷なまでに思い知らされる難しさがあるのではないかと語った。
エンジニアとコミュニケーションをとる阪口
写真: Masahide Kamio
「ボートレースでは、現実を突きつけられるのかなという気がします」
「前のレースで優勝したボートやモーターをそのまま受け継いでも、自分とは合わないこともあるという話もよく耳にします。そういった『ビッグチャンスでもありながら、緊張感もある』……そんなシチュエーションは僕たちにはありません。次のレースで坪井くん(坪井翔/阪口と同じトヨタ陣営のエースドライバー)のクルマが回ってくることはないですから(笑)」
また笹原も、チームスタッフの働きの全てが噛み合わないと勝てないのがモータースポーツだとしつつ、「逆にスーパーフォーミュラをドライバーひとりでやってみたらどうなるのか、ちょっと見てみたいですよね。エンジンとかかかるのかな(笑)」と苦笑。そして笹原と阪口がふたり口を揃えて「たぶん無理です!」と続けた。
逆にボートレーサーの仲谷は、スーパーフォーミュラには団体競技ならではの重圧があるはずだと語った。
「(ひとりで調整をすることは)勝ちたいからやっているので大変さは感じないのですが、スーパーフォーミュラでは仲間がセッティングしてくれるんですよね。仲間の思いも背負って走るのは大変そうだなと思います。僕たちは『負けたら自分のせい』なので、(すぐに気持ちを切り替えて)『次どうしよう』と思えるのですが」
写真: BOAT RACE振興会
またこれまで何度もサーキットに足を運んだことがあるという毒島は、さすが“モータースポーツ通”だけあって、スーパーフォーミュラの大変さをより解像度高く理解している。
「ドライバーはセッティングをする上で、(フィーリングを)言葉に出して伝えないといけない部分がありますよね。擬音で言ったりするんですよね? そうやって形にしていくのは大変な作業だと思います」
「僕たちは1週間走ればモーターが変わります。それはすごく楽です。年間のレース数も多く、負けを取り戻せるチャンスがあります。ただスーパーフォーミュラは年間7大会くらいですよね? 1回1回に対する責任感はすごく大きなものがあるんじゃないかと思います」
身体の硬さは対照的
それ以外にも、スーパーフォーミュラとボートレースは観戦しているファンからは一見すると分かりにくい側面がある。それがフィジカル的な負担。どちらの競技も、身体的にどういった負荷がかかり、どういったものが求められるのか想像しづらい部分があると言えるだろう。
レーシングドライバーは強烈なGに耐える必要があるため首を鍛えているという点は、多くのファンに知られている。また心拍数も、人によっては陸上の800m走をしている時のような、全力疾走時に近いレベルに上昇する。
それを笹原は「全速力で走りながらリモートワークをしている」ようなものだと表現する。
Ukyo Sasahara, REALIZE KONDO RACING
写真: Masahide Kamio
「他の選手とバトルしている時など緊張感ある瞬間は、人によっては心拍数が(毎分)200くらいになる選手もいて、それはデータでも実証されています。中にはずっと一定の選手もいてそこは人それぞれですが、そういった部分はパッと見伝わりづらいですよね」
また阪口は、「スーパーフォーミュラを走った後に疲労を感じる箇所と、トレーニングする箇所を合わせるのが難しい」ため、純粋な筋力トレーニングが全てレースに活かされているかどうかは分からないとしたが、反射神経などが落ちないようなコンディショニングに気を遣っていると語った。
一方の仲谷も、ボートレーサーも筋力よりは反射神経や目の動きが大切になってくる点は同じだと語ったが、決定的に違ったのは身体の柔軟性。彼らはボートにいわゆる“女の子座り”で乗艇する。そこからさらに身体を起こしたり、旋回する際にはイン側に身体を傾けたり……「普段しない姿勢で乗るので」と仲谷は言う。
実はレーシングドライバーはその逆で、身体が硬い人が多いとよく聞く。笹原と阪口も「多いです(笑)」「本当にそうっす(笑)」と頷く。ドライバー仲間の間では“あるある”のようだ。
「幼い頃からレーシングカートに乗っている選手が多く、固まりやすい姿勢をしてきていると思います。僕も硬いです(笑)」と笹原。
スーパーフォーミュラとボートレースの初めてのコラボイベントは、参加したファンやメディアからも「非常に面白かった」と好意的な声が多く聞かれている。両競技のコラボが生むシナジーには今後も大いに期待ができそうだ。
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