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野尻智紀「チャンピオンとして、簡単に負けるわけにはいかない」スーパーフォーミュラ今季初優勝の内に秘めていた想い。そして涙のヤマケンにかけた言葉

スーパーフォーミュラ第2戦を制した野尻智紀。前日の第1戦はチームメイトの新人、リアム・ローソンの後塵を拝したが、この日は絶対に負けるわけにはいかないという決意で臨んでいた。そして山下健太に、優しい言葉を送った。

野尻智紀, TEAM MUGEN

 富士スピードウェイで行なわれたスーパーフォーミュラの2023年第2戦を制したTEAM MUGENの野尻智紀は、前日に行なわれた開幕戦でチームメイトのリアム・ローソンが勝ったことに刺激を受け、「簡単に負けちゃいけない」という想いでこの日のレースに臨んでいたことを明かした。

 スーパーフォーミュラを2連覇している絶対王者、野尻智紀(TEAM MUGEN)が、さらに一段階強さを増したかもしれない。

 4月8日(土)に行なわれたスーパーフォーミュラの開幕戦。野尻はポールポジションからスタートしながらも、レースでは今季から新たにチームメイトとなったルーキー、ローソンにオーバーテイクを許し、2位でチェッカーを受けた。

 このレース後に野尻は、負けたものの「満足している」と語っていたが、内心穏やかではなかったようだ。

 第2戦でトップチェッカーを受け、マシンを降りた直後、野尻はテレビのインタビューで、次のように語っていた。

「日本のチャンピオンとして、『昨日は負けて何やってるんだ!』という声もあったと思います。今日は速さもあって、なんとしても勝ってやるという気持ちでレースに臨みました。勝ててよかったです」

 レース後の記者会見でも、野尻は次のように語り、この日の第2戦に向けてかなり集中していたと明かした。

「昨日は2位で、チームメイトのリアムが優勝でした。チャンピオンとしてスーパーフォーミュラを戦っているという立場、そしてファンの皆さんの想いを考えると、簡単に負けちゃいけないと思っていました」

「今日に向けては、自分のメンタル的な部分にも、かなりくるモノがありました。でもしっかり集中し直して、今日に臨みました。予選もパーフェクトだったし、決勝でも良いクルマに仕上げてもらって、ピット作業も最高でした。1日を通じて、チームのみんなが、減点がひとつもない良い仕事をすることができたと思います」

 レースでは、1周目にTGM Grand Prixの大湯都史樹に先行されてしまうことになった野尻。しかしチャンスが必ず訪れると考え、その時を待っていたという。

 結果的にそれはピットインのタイミングということになった。セーフティカー中にほとんどのマシンがピットインを行なったが、大湯はタイヤ交換を終えてピットレーンに戻る際、アンセーフリリースと判断されるのを避けるために後続のマシンが通過するのを一瞬待った。このタイムロスにより、野尻が前に立つことになったのだ。

「スタート自体は可もなく不可もなくという感じでしたが、1コーナーを立ち上がったところでホイールスピンさせてしまって、大湯選手に抜かれてしまいました」

「厄介な相手に行かれてしまったなという感じはありましたが、このまま行ければ大丈夫という手応えもありました」

「どこかでチャンスは1回はくるだろうと思っていたので、そのチャンスを待つように、しっかりとついていこうという感じでレースを進めていきました」

 なお大湯は、レースが再開された直後に野尻に並びかけたが、ロックアップさせ、タイヤを痛めてしまうことになった。この時の状況について野尻は、テレビのインタビューでこう語っていた。

「僕が限界のところでブレーキをかけたら、大湯選手はロックさせていました。彼は勝ちたい気持ちが強かったと思います。そこを逆手に取って、という戦いもできました」

「僕もレース終盤にはタイヤのバイブレーションが気になって、走り切れるかどうか不安でしたが、走り切ることができました」

 なお野尻は、土曜日から決勝に向けて、セットアップを変更したという。その手応えはかなりのものであり、テストで苦戦した次戦の鈴鹿でも、良い走りを期待できると語った。

「鈴鹿は、テストを終えた段階では不安が残るかなと思っていました。でも今日色々とセットアップを変えてみて、かなり良い走りができそうだなという手応えを感じました。次の鈴鹿も非常に楽しみです。すぐにこの場(優勝会見)に戻ってこられるように頑張ります」

 なおこの会見では、3位に入った山下健太(KONDO RACING)が涙する場面もあった。山下はスーパーフォーミュラでは長く表彰台から遠ざかっており、しかも今年はじめにはスーパーGTのテストで事故に遭い、スーパーフォーミュラのテストに参加することができなかった。今週末がまさにぶっつけ本番だったわけだが、開幕戦はスタート直後に接触でリタイアと、満足に走れない中、この第2戦では望外の表彰台を手にしたわけだ。

 山下はかなり苦悩していたようで、次のように自分の心情を吐露した。

「スーパーフォーミュラでは結果が出ない時期が長くて、3年色々とやっても何もなく、ポイントも獲れなかった……向いてないかなとも思っていたんです」

「今年に入ってから事故をして、きつい時期もあったんです。これまではテレビで、勝って泣いている人を見て『なんでだよ』と思っていたんですけど、気持ちがわかっちゃいました」

 これに応じたのが野尻だった。野尻は自らマイクを握ると、次のように山下に語りかけた。

「向いてないって思う時あるよね。僕もランキング18位(実際は17位)になった時は、もう辞めてやろうと思ったもん。頑張ろう」

 山下はこれに「よろしくお願いします」と返した。

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 厳しい時期を乗り越え、強くなった野尻。そして今回悔しさを内に秘め、結果も出した。そして苦しむ後輩に声をかける。

 今や野尻は、名実共にスーパーフォーミュラを牽引する存在になったようだ。

 
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