刺激的なレースの予感! 2025年スーパーGTセパンラウンド、世界最速プレビュー(?)……参戦ドライバー・エンジニアに聞く
2025年に久々の復活を果たすことになったスーパーGTのセパン戦。これまでレースやテストを通してセパンを経験してきたドライバー・エンジニアたちに、サーキットの印象などを聞いた。
Super GT sepang testing, day4
写真:: 皆越 和也
2025年のスーパーGTカレンダーに、セパン・インターナショナル・サーキットでのレースが加わった。同シリーズでは2019年タイ以来となる海外戦、そしてセパンでのレース開催は2013年以来12年ぶりとなる。
セパンはレースが開催されなくなってからもオフシーズンテストが実施されてきたため、多くの関係者にとって今でも馴染みがあるサーキットでもある。しかしレースの開催は久しぶり……一体どんな戦いが繰り広げられるのか? 参戦ドライバーやエンジニアに話を聞いた。
コースレイアウトの印象は?
写真: 皆越 和也
まずはコースレイアウトについて。メインストレート、バックストレートと2本の長い直線があり、途中には中高速コーナーが多く散りばめられているが、彼らから出てきた言葉でほとんど共通していたのが、「タイヤに厳しいコース」ということだ。
「とても素晴らしいコースレイアウトで、高速コーナーがあってタイヤには厳しい。例えばここ富士よりもタイヤのデグラデーション(性能劣化)は大きいし、特にフロントタイヤがキツい」(ロニー・クインタレッリ/NISMO)
「あそこで僕はGT500で3回優勝(2007年、2008年、2013年)しているから、かなりの思い入れがある。レイアウトも楽しいし、テクニカルでいつも暑くて……全てをまとめるのが難しいんだ。その暑さとレイアウトの関係で、良いタイヤマネジメントが報われるようなサーキットだから、そこが好きだね」(ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ/KONDO RACING)
「どの時間にレースをするのかにもよりますが、日中ですとかなり路面温度が上がる中で、高荷重のコーナーもありますから、タイヤにとってはキツいサーキットかなと思います(星学文エンジニア/STANLEY TEAM KUNIMITSU)」
またベテランの松浦孝亮(JLOC)は「けっこう難しいんですよね。正直あまり好きじゃないですね。中途半端なコーナーが多かったりして」とセパンを語る。それに近い意見として、TGR TEAM Deloitte TOM'Sの大立健太エンジニアは、セパンを“掴みどころのないサーキット”と表現した。
「一番掴みどころのないサーキットかなと思います。高速コーナーもあるし、1〜2コーナーのような低速の複合コーナーもあり……」
「長いコーナーが多いので、スープラにとってはあまり得意なサーキット特性ではないのかなと思います。とはいえ今年のテストは全体的に好調で終えられた感じはありましたが、(車両ごとの)スペックの違いなどもあったので何とも言えませんね」
ということは、セットアップという点でも悩ましいサーキットなのか? そう尋ねると、星エンジニアも大立エンジニアも基本的にはハイダウンフォースの方向性になるだろうと語る。
「富士のようにロードラッグ(空気抵抗が小さくなるセットアップ)でいくイメージはないですよね。コンディション的にも暑いですから、ダウンフォースを取りに行く方向になると思いますね」(星エンジニア)
「ローダウンフォースかミディアムダウンフォースか(で悩む)というところではないですね。ハイダウンフォースはハイダウンフォースです。ビッグブレーキもあるので、そこを含めるとどうしてもダウンフォースが欲しいですから」(大立エンジニア)
ただその一方で、HRC(ホンダ・レーシング)で車体開発責任者を務める徃西友宏氏は、具体的には話さなかったものの、メーカーごとにセットアップの“狙い”が異なる可能性を次のように示唆した。
「各社それぞれ考えがあると思うので、あまりお話しするのもアレですが……セパンは多彩なコーナーが散りばめられているので、考え方によっては狙いが分かれると思います」
「鈴鹿や富士、SUGO、オートポリスなど(セットアップの方向性を)誰でも二者択一で言えるようなコースとは少し違うかなと思うので、我々なりの狙いはあります。ただ随分あそこでレースをしていないですし、最近はテストしかしていないので、今年のクルマをセパンでどう使うべきか、予習をしていきたいです」
オーバーテイク満載のレースに?
写真: 皆越 和也
では、実際のレース展開としてはどういったものは期待されるのか……具体的にはオーバーテイクはどれほど見られそうなのか?
これについても概ね意見が一致している。オーバーテイクは多くのコーナーで見られそうだという。特に、先述の「タイヤに厳しい」という要素がそこに拍車をかけそうだ。
「オーバーテイクのチャンスはたくさんある。ターン1、バックストレート前のペアピンとか」(クインタレッリ)
「タイヤの摩耗が厳しくなれば、(タイヤが摩耗したライバルよりも)ブレーキングでしっかり止まれるというアドバンテージを活かしてオーバーテイクできる可能性は当然あると思います。ブレーキングポイントは何箇所かあるので、そういう意味ではオーバーテイクのできるサーキットではありますね」(星エンジニア)
「しっかりオーバーテイクポイントがあるので、そういった意味では楽しいと思います。1コーナー、4コーナー、最終コーナー、バックストレートに出てくるところ……タイヤが垂れてきた相手がいたら、結構どこでも行けるんじゃないですかね」(松浦)
セパン戦に関してはナイトレースを検討していることが明らかになっているが、最終的にどの時間帯でレースが実施されるかは未確定であり、さらにはレース距離も分からない。ただ彼らのコメントを聞くと、エキサイティングなレースになりそうな予感だ。
そのため、セパンでのレースを心待ちにしていたドライバーも多いようだ。
写真: Masahide Kamio
「2020年にセパンでレースが予定されていたときは、本当に楽しみにしていたんだ。あの年は元々セパンもタイも入っていて良いカレンダーだったけれど、コロナ禍以降は難しかったね。年に2回ずつ鈴鹿と富士に行くというのはちょっと退屈なんだ。これでいつもと違うことができるのは本当に嬉しい」(ベルトラン・バゲット/TEAM IMPUL)
「セパンは大好きだ! スーパーGTが(セパンに)戻るのは本当に嬉しい。パドックの色んな人に聞いても、みんなあそこに行くのを楽しんでいる。素晴らしい場所だし、行かなくなっていたのは残念だった」(デ・オリベイラ)
「久々のセパン戦は、みんな楽しみにしてるんじゃないですかね」(松浦)
2025年に復活するスーパーGTセパン戦は、6月27日、28日にシリーズ第3戦として開催される予定だ。
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