レースレポート

F1アイフェルGP決勝:ハミルトン、”皇帝”に並ぶ91勝目! フェルスタッペン2位、リカルド久々表彰台

F1第11戦アイフェルGPは、メルセデスのルイス・ハミルトンが歴代最多タイとなる通算91勝目を挙げた。レッドブル・ホンダのマックス・フェルスタッペンは2位だった。

Lewis Hamilton, Mercedes F1 W11, 1st position, celebrates in parc ferme

Lewis Hamilton, Mercedes F1 W11, 1st position, celebrates in parc ferme

Zak Mauger / Motorsport Images

 F1第11戦アイフェルGPの決勝レースがニュルブルクリンクで行なわれ、メルセデスのルイス・ハミルトンが優勝。ミハエル・シューマッハーに並ぶ、歴代最多タイとなる通算91勝を達成した。

 本来なら、鈴鹿サーキットで日本GPが開催されていたはずの10月11日だが、コロナ禍の影響を受けたスケジュール再編で、アイフェルGPが開催されることになった。

 ニュルブルクリンクでのグランプリ開催は7年ぶりとなった上、金曜日は悪天候により全く走行ができず。ランス・ストロールの体調不良により予選から急きょ代役参戦となったニコ・ヒュルケンベルグ(レーシングポイント)だけでなく、多くのドライバーが十分なロングランをできないまま、決勝に臨むことになった。

 その影響なのか定かではないが、ガレージからグリッドに向かうレコノサンスラップから、ドライバーが不具合を訴えるケースも相次いだ。マックス・フェルスタッペン(レッドブル)はヘルメットのバイザーがきちんと閉まらないと無線を入れた。セルジオ・ペレス(レーシングポイント)は、『シート右側の何かが壊れている』と報告。チームはグリッド上で対応を迫られた。

 また、ハミルトンは『ステアリングがすごく動いてしまう。夜の間に直さなかったのか?』とチームに訊く場面も。チームは修理の許可が出なかったと返しており、スタート前に不安要素を抱え込むことになった。

 レーススタートが近づくニュルブルクリンク上空には曇り空が広がり、気温10度、路面温度19度という寒いコンディション。降水確率40%という中で各車がフォーメーションラップに向かった。

 スタートタイヤはソフトタイヤを選んだマシンが多かったが、セバスチャン・ベッテル(フェラーリ)とアルファタウリの2台、ロマン・グロージャン(ハース)はミディアムタイヤを選んだ。

 60周のレースがスタートすると、ハミルトンが良い蹴り出しを見せた。ポールポジションの僚友、バルテリ・ボッタスを交わそうとするが、両車ターン1をオーバーシュートしかけながらも、なんとかボッタスが首位を守った。メルセデスの2台にフェルスタッペン、シャルル・ルクレール(フェラーリ)、ダニエル・リカルド(ルノー)が続くというトップ5。アレクサンダー・アルボン(レッドブル)はリカルドに先行を許した形だ。

 ここ数レースはスタート直後に波乱があったが、今回は後続にも大きな混乱はなかった。

 4番手のルクレールのペースは上がらず、徐々にフェルスタッペンから遅れていってしまう。これで、トップ3が1.5秒前後の等間隔を保ち、隊列から抜け出していった。上位3台より1周1秒以上遅いペースのルクレールは、5番手リカルドからプレッシャーをかけられる形になった。

 左フロントタイヤにフラットスポットを作ってしまい、この2台になかなか近づけなかったアルボンは、8周目にいち早くピットイン。ミディアムタイヤへと履き替えた。

 9周目、リカルドはターン2のアウト側からルクレールをオーバーテイク。これで4番手に浮上するが、前のフェルスタッペンとはすでに17秒もの差が開いてしまっていた。ルクレールはタイヤが厳しいのか、11周目にピットイン。こちらもミディアムタイヤへと交換した。

 一方、ミディアムタイヤでスタートしていたベッテルは、ターン1で挙動を乱しスピン。タイヤを痛めてしまい、ピットインしてハードタイヤへと交換した。

 13周目、トップ争いにも変化が起きる。ボッタスがターン1で右フロントタイヤをロックさせてしまい、オーバーシュート。ターン2でハミルトンにオーバーテイクを許してしまった。フェルスタッペンにも迫られたボッタスはピットに入り、ミディアムタイヤへと交換した。

 さらに、キミ・ライコネン(アルファロメオ)がターン1で止まりきれず、アウト側にいたジョージ・ラッセル(ウイリアムズ)と接触。弾き飛ばされる形となってしまったラッセルはダメージが大きく、ここでレースを終えた。後に、この件でライコネンには10秒のタイム加算ペナルティが科された。

 16周目、ラッセルの車両回収のためバーチャルセーフティカーが発動。この好機を逃すまいと、ハミルトンやフェルスタッペン、リカルドがピットインし、それぞれミディアムタイヤへと交換した。車両回収はすぐに終わり、バーチャル・セーフティカーは解除された。

 その直後、アルボンとバトルしていたクビアトがターン14でインカット。コースに復帰したクビアトのフロントウイングをアルボンが踏んでしまった。これでクビアトはメインストレートでウイングを失い、緊急ピットインを強いられた。

 さらにレースは慌ただしい動きを見せる。ボッタスがパワーを失いスローダウンしてしまったのだ。エンジニアの指示でリカバリーを目指したものの、どうやらパワーユニットにトラブルが起きてしまったようで、ボッタスはガレージにマシンを入れ無念のリタイアとなってしまった。

 これで優勝争いはハミルトンとフェルスタッペンの一騎打ちに。両者ファステストラップを出し合いながら周回を重ねていくが、ふたりの差は少しずつ開いていき、24周目にはその差が3.3秒となった。

 後方では、5番手を走っていたエステバン・オコン(ルノー)が緊急ピットイン。『何かが壊れた。ブレーキもギヤシフトもできない』と訴え、ピットに戻った。また、ガスリーと激しいバトルを演じ、ターン1でタイヤをロックさせてしまったアルボンもピットイン。そのままエンジンを切り、リタイアとなった。

 スタートからソフトタイヤで走り続けていたランド・ノリス(マクラーレン)も、27周目にパワーを失いペースダウン。エンジニアの指示に従い対処したものの、症状は改善せず。5番手のペレスが徐々に近づいてきた。

 ペレス、サインツJr.は29周目にピットイン。ノリスは次の周にピットに入り、ペレスの前でコースに復帰したものの、ペレスに簡単にオーバーテイクを許してしまった。

 30周を終えたところでガスリーがピットインしハードタイヤへ交換。これで全車がタイヤ交換義務を消化した。首位のハミルトンはフェルスタッペンをジリジリと引き離し、その差は6秒。3番手のリカルドとフェルスタッペンの差は56秒と大差だ。

 3番手のリカルドは、16周を終えたところでピットに入っており、1ストップで走りきれるかは微妙な状況。一方、ルクレールを交わして4番手に浮上したペレスは、タイヤも新しくリカルドの15秒後方につける。

 ペレスに抜かれたルクレールはピットインし、ミディアムタイヤを履いて追い上げ態勢。チームメイトのベッテルの前に出ると、ペースが3秒以上遅い6番手のノリスへと迫っていった。一方、ベッテルはガスリーやヒュルケンベルグに抜かれ、10番手まで後退。たまらず43周目にピットインし、30周走ったハードタイヤからソフトタイヤへと交換した。

 44周目、手負いの状態で走行を続けていたノリスは完全にエンジンが止まってしまい、コースサイドにストップ。これで45周目にセーフティカー(SC)が出動することになった。

 このタイミングで各車が続々とピットへ飛び込んだ。トップ5のハミルトン、フェルスタッペン、リカルド、ペレス、サインツJr.は全車が中古のソフトタイヤに交換。6番手のルクレールはステイアウトし、ハードタイヤを履くグロージャンもステイアウトで7番手までポジションを上げた。8番手のガスリー、9番手のヒュルケンベルグは新品のソフトタイヤへと履き替えている。

 路面温度はわずか16度。スロー走行中にタイヤを暖めるのは至難の業ということで、ハミルトンやフェルスタッペンは早くSCを解除してくれと無線で訴えた。 

 50周目、残り11周でレースがリスタート。ハミルトンが上手く加速した一方、フェルスタッペンはタイヤが暖まっていないのか最終コーナーで挙動を乱し、ターン1でリカルドと横並びになってしまう。しかし、なんとかポジションを守った。

 ペレスもリカルドの隙を伺いオーバーテイクを仕掛けたものの、上位5台には順位変動がなかった。後方では、ハードタイヤを履いたグロージャンがガスリーとヒュルケンベルグにオーバーテイクを許し、9番手まで後退。ガスリーはさらにルクレールをも交わし、6番手とした。

 首位のハミルトンは一気にギヤを上げペースアップ。ラップレコードを塗り替えながらファステストラップを連発し、フェルスタッペンとの差を一気に広げていった。53周を終えたところで、その差は3秒となった。

 その後ハミルトンのペースは一旦落ち着き、フェルスタッペンとの差を2.5秒ほどにコントロールする。3番手リカルドは、ペレスを1.5秒ほどの差で抑え、レース最終盤を迎えた。

 ハミルトンはファステストラップのボーナスポイントを狙い、58周目に1分28秒145を叩き出す。これで5秒まで差が開いたフェルスタッペンは、ファイナルラップでペースを上げセクター1を全体ベストを通過した。

 ハミルトンは悠々とトップチェッカーを受けた。これで、ハミルトンはミハエル・シューマッハーに並ぶ歴代最多タイの91勝目を挙げることとなった。

 ハミルトンの後ろでフィニッシュラインを横切ったフェルスタッペンのタイムは1分28秒139。意地のボーナスポイントを獲得したフェルスタッペンだったが、終盤のスプリント対決ではハミルトンに力負けする形の2位となった。

 3位はペレスを抑えきったリカルド。レッドブル時代の2018年モナコGP以来、ルノーでは初の表彰台を獲得した。

 4位以下ペレス、サインツJr.、ガスリー、ルクレール、ヒュルケンベルグ、グロージャン、ジョビナッツィまでがポイント獲得。ガスリーはサインツJr.のDRS圏内に迫りながらも、抜ききることができなかった。代役のヒュルケンベルグは8位で、殊勲のポイント獲得となった。

 今回、ルーベンス・バリチェロに並び歴代最多出走タイとなる323戦目を終えたライコネンは、12位でポイント獲得はならなかった。

 レース後のパルクフェルメでは、ミック・シューマッハーが父ミハエルが2012年に使っていたヘルメットをハミルトンに贈った。

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順位 ドライバー 周回数 タイム 前車との差 平均速度 ポイント
1 United Kingdom ルイス ハミルトン 60 1:35'49.641       25
2 Netherlands マックス フェルスタッペン 60 1:35'54.111 4.470 4.470   19
3 Australia ダニエル リカルド 60 1:36'04.254 14.613 10.143   15
4 Mexico セルジオ ペレス 60 1:36'05.711 16.070 1.457   12
5 Spain カルロス サインツ Jr. 60 1:36'11.546 21.905 5.835   10
6 France ピエール ガスリー 60 1:36'12.407 22.766 0.861   8
7 Monaco シャルル ルクレール 60 1:36'20.455 30.814 8.048   6
8 Germany ニコ ヒュルケンベルグ 60 1:36'22.237 32.596 1.782   4
9 France ロマン グロージャン 60 1:36'28.722 39.081 6.485   2
10 Italy アントニオ ジョビナッツィ 60 1:36'29.676 40.035 0.954   1

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