【特集】あなたはいくつ覚えている? 笑いあり奇跡あり茶番ありのF1珍場面
F1の長い歴史の中では、奇跡のような瞬間や珍場面が多数生まれた。今回はF1公式YouTubeで紹介された珍場面をピックアップ。

こんな奇跡2度と起きない? 予選トップ3台が完全同タイム(1997年ヨーロッパGP)

Starting grid
Photo by: Motorsport Images
F1史に残る“奇跡”が起きたのが、ヘレスで行なわれた1997年最終戦ヨーロッパGP。このレースは、フェラーリでの初タイトルがかかったミハエル・シューマッハーがライバルのジャック・ビルヌーブと接触し、これが故意と判断されて選手権から除外された一件があまりにも有名だが、予選でも珍事が起きた。
予選でウイリアムズのビルヌーブとハインツ-ハラルド・フレンツェン、そしてシューマッハーが記録した最速タイムは、共に1分21秒072。3人が1000分の1秒まで全く同じタイムを出したのだ。グリッド順は先にタイムを出した順番となり、ビルヌーブがポールポジション、2番グリッドにシューマッハー、3番グリッドにフレンツェンが並んだ。
今のF1では不可能!「ドライブスルーファステストラップ」(1993年ヨーロッパGP)

Ayrton Senna, McLaren MP4/8
Photo by: Sutton Images
雨の中、マクラーレンのアイルトン・セナがオープニングラップでごぼう抜きを見せて首位に立ったドニントン・パークでのヨーロッパGPは、今なお語り草となっている。その際セナが記録したファステストラップは、非常に特殊な状況で記録されたものだった。
レースが3分の2を消化した頃、セナはピットへ。しかしクルーの準備ができていないと見るや、セナはそのままピットレーンをスルーしてコースに復帰した。この際のタイムがファステストラップとなったのだ。
現在のF1ではあり得ないケースだが、これには理由がふたつある。まずドニントン・パークのピットレーン入口は最終コーナーを内側にショートカットするような形状となっていたこと。そして何より、当時は現在のようなピットレーンでの速度制限がなかったことだ。
どうぞどうぞ……予選Q3アタックの先頭を嫌い、各車が超スロー走行の茶番劇(2019年イタリアGP)

Sebastian Vettel, Ferrari SF90, leads Carlos Sainz Jr., McLaren MCL34, Charles Leclerc, Ferrari SF90, Daniel Ricciardo, Renault F1 Team R.S.19, and the remainder of the Q3 participants
Photo by: Simon Galloway / Motorsport Images
直線スピードの速さがものを言うモンツァ・サーキットで行なわれたイタリアGPの予選。前のマシンのスリップストリームを使いたい、そんな各車の思惑が交錯した結果、Q3のラストアタックの際には隊列の先頭に出ることを嫌うドライバーたちがスロー走行。その状態が続いた結果、ほとんどのマシンが最終アタックに入れないままチェッカーを受けてしまった。
世界最高峰のレーシングカーであるF1マシンが、ライバルに道を譲るようにコースをノロノロと走る様は、近年で屈指の茶番劇だと評された。
無線トラブル発生。シューマッハーが機転を利かせ“ハンドサイン”で対応(1999年フランスGP)

Michael Schumacher, Ferrari
Photo by: Ercole Colombo
雨に見舞われたフランスGPで、フェラーリのミハエル・シューマッハーは6番グリッドから追い上げを見せ、トップに立っていた。しかし電気系統のトラブルにより無線が通じない状態に。そこでシューマッハーは機転を利かせ、自身を映すオンボードカメラを通じてハンドサインでチームと意思疎通。それを見たチームはステアリングを交換するという判断を下した。結果的にその後もトラブルは解消しなかったが、シューマッハーのスマートさが垣間見えた瞬間であった。
最終ラップにまさかのタイヤパンクも優勝! ハミルトンの3輪トップチェッカー(2020年イギリスGP)

Lewis Hamilton, Mercedes F1 W11 with a puncture on the final lap
Photo by: Andy Hone / Motorsport Images
近年のF1で最も劇的だったチェッカーのひとつが2020年のイギリスGPだ。このレースでは、終盤にタイヤのパンクが続出。バルテリ・ボッタス(メルセデス)やカルロス・サインツJr.(マクラーレン)のタイヤが次々と壊れ、後退を余儀なくされた。
そんな中、首位走行中のルイス・ハミルトン(メルセデス)も最終ラップにパンクに見舞われた。しかしハミルトンは3輪でコースの約半分を走り切り、レッドブルのマックス・フェルスタッペンの追撃を振り切ってトップチェッカーを受けた。ハミルトンの悪運の強さを象徴するようなレースでもあった。
わずか0.011秒差のフィニッシュは、チームオーダーの“お返し”?(2002年アメリカGP)

Rubens Barrichello, Ferrari F2002 past Michael Schumacher, Ferrari F2002
Photo by: Sutton Images
2002年シーズンに圧倒的な強さを見せたフェラーリだが、オーストリアGPではミハエル・シューマッハーを勝たせるため、首位を走っていたチームメイトのルーベンス・バリチェロにポジションを譲らせバッシングを受けた。その際シューマッハーも本意ではない勝利だったためか、バリチェロを表彰台の中央に立たせるなどしたが、その数ヵ月後のアメリカGPでは逆にシューマッハーがバリチェロに勝利をプレゼントする形となった。
レースはシューマッハー、バリチェロのワンツーとなっていたが、フィニッシュライン手前でシューマッハーが減速。2台横並びでチェッカーとなり、0.011秒差でバリチェロの優勝となった。これは100分の1秒単位でしか計測されていなかった1971年のイタリアGP(0.01秒差)と並び、史上最も僅差のレースとして知られているが、故意に順位を操作したような決着であるため、物議を醸したレースでもある。
ハミルトン、ひとりぼっちのブラックアウト(2021年ハンガリーGP)

Lewis Hamilton, Mercedes W12
Photo by: Mark Sutton / Motorsport Images
レッドブルのフェルスタッペンとメルセデスのハミルトンが激戦を繰り広げた2021年シーズンのF1でも、歴史に残る珍場面が生まれた。ダンプコンディションでスタートしたハンガリーGPは各車インターミディエイトタイヤを履いていたが、直後の多重クラッシュによる赤旗中断の間に路面は乾いていった。
そのため、レース再開に向けてコースインしたドライバーは、グリッドにつくことなく続々とピットに向かい、ドライタイヤに交換。先頭のハミルトンだけがグリッド上に取り残されてスタートの時を迎えた。
F1界の未解決事件……マシンに付けられた3000万円のダイヤモンドが行方不明に(2004年モナコGP)

Christian Klien, Jaguar R5
Photo by: Rainer W. Schlegelmilch / Motorsport Images
2004年のモナコGPで、ジャガーは映画『オーシャンズ12』とタイアップ。マシンは特別カラーリングとなり、キャストのジョージ・クルーニーやブラッド・ピットも駆け付けた。極め付けはフロントノーズに埋め込まれたダイヤモンド。これは本物のダイヤモンドであり、価格は30万ドル(約3476万円)という代物だった。
しかし、ジャガーのクリスチャン・クリエンはあろうことかオープニングラップでクラッシュを喫し(タイトル下の写真参照)、ノーズを破損。ダイヤモンドは行方不明となった。今もコースの何処かに落ちているのか、それとも何者かに盗まれたのか……真相は闇の中だ。
シューマッハー、チェッカーを受けずに勝利を勝ち取る(1998年イギリスGP)

Michael Schumacher, Ferrari F300
Photo by: Motorsport Images
モータースポーツでは、トップでフィニッシュを迎えた者に対して最初にチェッカーフラッグが振られるのが常だが、1998年イギリスGPでのミハエル・シューマッハーは、チェッカーフラッグを振られることなく優勝を手にするという非常に稀なケースを経験した。
雨脚が強まったレース終盤、トップを独走していたミカ・ハッキネン(マクラーレン)はセーフティカー出動でそのマージンを失っただけでなく、コースオフにより首位の座をシューマッハーに明け渡した。しかし、そのシューマッハーには残り2周でセーフティカー中の追い越しによるペナルティの裁定が出た。ストップ&ゴーペナルティなのか、タイム加算ペナルティなのか……現場が混乱する中、フェラーリは最終ラップにシューマッハーをピットに呼び寄せたが、シューマッハーはフェラーリのピットにたどり着く前にピットレーンでフィニッシュラインを超えた。
レース後にはマクラーレンによる抗議もあったが、結果的にシューマッハーの勝利は揺るがず、混乱を招いたペナルティそのものが取り消された。
そんなことある!? トロロッソのフロントタイヤが左右同時に吹っ飛ぶ(2010年中国GP)

Sébastien Buemi, Scuderia Toro Rosso STR5 crashed in the first practice session
Photo by: Sutton Images
左右のフロントタイヤが同時に吹っ飛ぶ……まるで漫画の世界のような出来事が起きたのが、2010年の中国GPだ。トロロッソのセバスチャン・ブエミは、フリー走行1回目でバックストレートエンドに時速300kmオーバーで差し掛かった際、左右のフロントタイヤがマシンから脱落した。まず右のタイヤが外れ、ほぼ同じタイミングで左も外れた。幸い、ランオフエリアが広かったこともあり大きなクラッシュには繋がらず、本人は無事だった。
番外編:井上隆智穂の受難。マーシャルカーに跳ねられ負傷

Taki Inoue, Arrows FA16 is knocked down by a medical car after trying to put out a fire
Photo by: Motorsport Images
F1公式YouTubeでは選外となっているが、日本のF1ファンのみならず世界のF1ファンの脳裏に今なお強く残っているのが、1995年ハンガリーGPの井上隆智穂(フットワーク)だろう。井上はレース中、トラブルによってストップした後にマシンを降り、消火器を持って再びマシンに駆け寄ったが、その際にマーシャルの車両に跳ねられてしまった。幸い大事には至らなかった井上だが、彼はモナコGPでも牽引されるマシンに乗っている際にオフィシャルカーに追突されており、2度も珍事を経験する羽目となった。

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