SC中、角田だけ同一周回に戻れなかった原因は自動システム。“アブダビ事件”経て導入……「誤作動なかったが今後議論される」とFIA
F1サンパウロGPで角田裕毅は、セーフティカー先導中に同一周回に戻ることが許されなかったが、この件についてFIAが説明した。
写真:: Mark Sutton / Motorsport Images
F1第21戦サンパウロGPを17位で終えた角田裕毅(アルファタウリ)。唯一の周回遅れでレースを終えたが、彼はセーフティカー先導中にポジションをふたつ失い、本来であればトップと同一周回に戻れるところ、それが許されないという不運に見舞われた。
その原因は、FIAがセーフティカー先導時の隊列をコントロールするために導入している独自のシステムにあった。これは皮肉にも、昨年のアブダビGPで問題となった事象を解決するために作られたものだった。
昨年のF1アブダビGPでは終盤にセーフティカーが出された際、タイトルを争うルイス・ハミルトンとマックス・フェルスタッペンの間に周回遅れのマシンが数台いたが、FIAはふたりの間にいるマシンだけを同一周回に戻すという措置をとった。その結果、レースはファイナルラップに再開することができ、前が開けたフェルスタッペンはハミルトンをオーバーテイクしてタイトルを勝ち取ったのだ。
この一件は当時のレースディレクターであるマイケル・マシとFIA担当者にヒューマンエラーがあったと認められているが、現在ではこのような事態を避けるためにF1の計時システムが修正され、周回遅れのマシンに対してはリスタートまでに隊列を追い抜いて良いと自動的に通知されるようになっていた。
今回55周目にセーフティカーが出された時、周回遅れだったのは15番手の角田、16番手のアレクサンダー・アルボン(ウイリアムズ)、17番手のニコラス・ラティフィ(ウイリアムズ)の3台。しかしタイミングスクリーン上に「以下の周回遅れのマシンはオーバーテイクが許可される」として表示されていたのは、アルボンとラティフィのカーナンバーだけだった。
角田の担当エンジニアはそのメッセージに困惑しながら、無線で「君はオーバーテイクできる……スタンバイ、スタンバイ」と伝えた後、「ダメだ、オーバーテイクはできない」と続けた。既にカルロス・サインツJr.(フェラーリ)を追い抜いていた角田だったが、セルジオ・ペレス(レッドブル)の後ろで待機。その横をラティフィがすり抜けていった。
「何だよこれ、僕らは何をやってるの?」と無線でも困惑していた角田。周回遅れのままリスタートを迎えたため、リスタート時はホームストレート脇で大幅に減速して後続の隊列を先に行かせることになった。
本来であれば他のマシンと同一周回でリスタートを迎え、ポジションアップの可能性もあった角田はレース後「そのまま隊列に並べと言われました。なぜかは分かりません。FIAは僕が5番手あたりを走ってると思ったんですかね!」とコメント。アルファタウリのフランツ・トスト代表は明らかに不満げで、多くを語ることはなかった。
ではなぜ、FIAのシステム上で角田のアンラップが許可されなかったのか? それは既に周回遅れだった角田がセーフティカー中にピットインし、その際にピットレーン上でトップのジョージ・ラッセルの前に出た状態でコントロールラインを通過したため。FIAのレギュレーションによって定義されている、アンラップできるマシンを判定するタイミングで、角田がその瞬間だけちょうど“同一周回”になっていたのだ。無論、FIAの自動システムはこういった事態まで想定できていなかったということだろう。
FIAは声明の中で、システム自体は正しく機能していたものの、特殊なシナリオによって今回のような一件が起きてしまったと説明した。
「22号車(角田)はセーフティカー出動後に最初に第1セーフティカーラインを通過した」
「しかし、彼がピットレーンに入った時、セーフティカーの隊列よりも速く走ることができた。その際、コントロールラインを通過する際に同一周回に戻ってしまった」
「コースに合流する時に彼は再び周回遅れとなったが、セーフティカー先導が終了する時点でそうする(同一周回に戻る)資格を得られなかった」
「レースコントロールはF1側の計時と照らし合わせて、6号車(ラティフィ)と23号車(アルボン)だけがアンラップできると確認した」
ただFIAは、この状況を見直して対処する可能性があると言及した。
「これは極めて珍しいシナリオで、システムの誤作動や手続き上のミスはなかった。こういった予測不可能なシナリオは起こり得る可能性があり、即時変更が必要なものもない」
「もちろん、これらは通常の手続きの一環として、今後のスポーツ諮問委員会で議論される」
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