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世は“大エンジニアリング時代”。スーパーフォーミュラの勢力図が示す「分析力」の重要性:英国人ジャーナリスト”ジェイミー”の日本レース探訪記

日本を拠点に活動するmotorsport.comグローバル版のニュース・エディター、ジェイミーがお届けするコラム。今回のテーマはスーパーフォーミュラにおける「エンジニアリング」だ。

リアム・ローソン(MUGEN)

リアム・ローソン(MUGEN)

Masahide Kamio

 2023年のスーパーフォーミュラはここまで3戦が終了しましたが、その中で最も驚かされたことのひとつが、チーム間の勢力図が昨年とほとんど変化していないという点です。

 今季からニューマシン『SF23』が導入されました。車両の特性がガラッと変わったことにより、昨年まで強さを誇ってきた王者TEAM MUGENが苦戦し、代わりにNAKAJIMA RACINGやKCMGのような昨年苦戦したチームが浮上してくるのでは……そのような声もありました。

 ただ、現時点ではそうなっていません。富士での開幕2レースは共にTEAM MUGENのリアム・ローソン、野尻智紀が制し、第3戦鈴鹿でもセーフティカーが入るまでローソンが優勝候補の一角にいました。その結果、ディフェンディングチャンピオンの野尻は第3戦で大湯都史樹(TGM Grand Prix)との接触リタイアがあったものの、ポイントリーダーの座を維持。チームランキングでもTEAM MUGENが2番手以下に大差をつけています。

 ここ数年で圧倒的な強さを見せているため忘れられがちですが、TEAM MUGENの成功は他の古豪チームと比べると比較的最近の話です。彼らは参戦4年目の2013年に山本尚貴の手によってドライバータイトルを手にしていますが、当時は毎年のようにタイトル争いに絡んでいる訳ではありませんでした。むしろ彼らは、2017年にセルブスジャパンと提携したことで現在の成功の礎を築いたと言えます。

 

Photo by: Masahide Kamio

 同年のこの提携は、チームが2台体制に戻ったこと、レッドブルからの支援を得たこと以上に意味がありました。TEAM MUGENはセルブスとのタッグで強固なエンジニアリングプラットフォームを手にしたことで、その分野においてライバルをリードすることに成功したのです。

 その中で鍵となる役割を果たしたのが、星学文エンジニアでした。星エンジニアはセルブスがドラゴコルセと提携していた2015年、2016年に小暮卓史の担当エンジニアを務めて経験を積み、TEAM MUGENとの提携となった2017年はピエール・ガスリー担当となり、彼をランキング2位に導きました。

ガスリー(左)と星エンジニア

ガスリー(左)と星エンジニア

 星エンジニアはセットアップにおいて、改善すべき領域を特定する上での新しい方法論を持ち込みました。また彼はマシンの組み付けプロセスの重要性を強く認識していて、車両がどのように組み付けられているのかについて正確に理解していたといいます。

 当時の星エンジニアは30代前半。セルブスはスーパーフォーミュラで大のつくベテランエンジニアが活躍していた当時から、既に若手エンジニアの育成を最重要視していたのです。

 2018年、今では野尻と強力コンビを形成している一瀬俊浩エンジニア(当時27歳)をデータエンジニアから福住仁嶺担当のトラックエンジニアに昇格させたのも、そういった背景があったようです。その後一瀬エンジニアは2019年から野尻担当に。一方の星エンジニアは2020年からテクニカルディレクターとしての役割を担うようになっていました。

野尻(右)と共にシリーズ連覇を成し遂げた一瀬エンジニア

野尻(右)と共にシリーズ連覇を成し遂げた一瀬エンジニア

Photo by: Masahide Kamio

 一瀬エンジニアは、データやオンボード映像を見ることで問題点やドライバーが求めているものを理解し、それを実行可能なソリューションに変換する能力に定評があります。それは彼がセルブスで鍛えられたということはもちろんのこと、ドライビングシミュレータを趣味としていて“ドライバー”としての嗅覚があることも大きく関係しているかもしれません。

 その後セルブスは、Team Le Mansでフェリックス・ローゼンクヴィストや小林可夢偉を担当したライアン・ディングル、現在TGM Grand Prixで活躍する上城直也、岡島慎太郎といったフレッシュなエンジニアをさらに迎え入れてきました。そんな中で、そのメソッドや哲学はTEAM MUGENにも浸透していったのです。現在ローソンを担当する小池智彦、野尻のパフォーマンスエンジニアを務める辻凱杜といったM-TECの若手エンジニアがその好例でしょう。

 だからこそTEAM MUGENは、2022年に完全自社オペレーションになってからもその強さを維持し、一瀬エンジニアがM-TEC所属としてチームに残留したことも手伝ってむしろさらに強力なチームになっていったのです。

 従来はマシン1台につき、レースエンジニアとそれをサポートするデータエンジニアがそれぞれひとりずつ就くことが定石とされていました。しかし、TEAM MUGENとセルブスジャパン(現在はTGM Grand Prixを担当)は、マシン1台あたり3〜4人のエンジニアが携わっていると言います。

大湯を担当する上城エンジニア(左)。星エンジニアはその上に立ち2台を統括する立場

大湯を担当する上城エンジニア(左)。星エンジニアはその上に立ち2台を統括する立場

Photo by: Masahide Kamio

 スーパーフォーミュラは走行時間が限られている上、わずかな路面状況の変化に大きく影響されるため、効率的で正確なデータ分析がこれまで以上に重要視されています。エンジニアの数が多いほど、必要とされる多くのデータが得られるのです。

 もちろんこれらはリソースとの兼ね合いになりますが、そういったエンジニアリング体制を構築するTEAM MUGENの成功、そしてTGM Grand Prixの大湯都史樹が見せる速さを鑑みても、現代はひとりの“天才エンジニア”を擁して戦う時代ではなくなったのかもしれません。

 ドライバーやエンジニアの感覚的なものに頼る“カンジニアリング”は、状況によっては有効かもしれません。ただ、たとえ経験豊富なドライバーであったとしても、過去に成功したことの再現にこだわるのではなく、現在進行形でデータが示しているものを信じるということが求められるのではないでしょうか。

 
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