開催カレンダーにバラエティ性を持たせづらい国内カテゴリー。海外戦、復活させませんか?:英国人ジャーナリスト”ジェイミー”の日本レース探訪記

日本を拠点に活動するmotorsport.comグローバル版のニュース・エディター、ジェイミーがお届けするコラム。今回は国内カテゴリーの開催カレンダーにおけるバラエティ性の少なさについて考える。

開催カレンダーにバラエティ性を持たせづらい国内カテゴリー。海外戦、復活させませんか?:英国人ジャーナリスト”ジェイミー”の日本レース探訪記
Listen to this article

 スーパーフォーミュラを主宰するJRP(日本レースプロモーション)は昨年12月、2023年シーズンのレース数が全9戦になることを発表しました。ちなみに昨年は全10戦開催。JRPはもっとレース数を増やしたいとの意向を示していましたから、これは少々残念な結果となりました。

 今季のレース数が1戦減ったのは、昨年1大会2レース制となっていた8月のもてぎラウンドが1レース制に変更されたことによるものです。これによりスーパーフォーミュラのカレンダーは特定のふたつのサーキット、つまり富士と鈴鹿でのレースが大半ということになります。

 富士と鈴鹿ではそれぞれ2大会3レースが開催され合計6戦。そこにもてぎ、SUGO、オートポリスでのレースが加わり、全9戦となるのです。カレンダーの3分の2が富士または鈴鹿でのレースとなっているため、TEAM IMPULの平川亮は以前「ふたつのサーキットで速さを発揮できればチャンピオン争いができる」と話していました。

 一方のスーパーGTはスーパーフォーミュラほどではありませんが、やはりカレンダーの半分が富士と鈴鹿のレースです。今季は全8戦中、富士と鈴鹿で2戦ずつ開催されます。

 また開催順についても、富士と鈴鹿のレースが連続するような形になっています。今季のスーパーGTは4月に岡山で開幕しますが、5月に富士、6月に鈴鹿でレースをした後、2ヵ月の長いサマーブレイクを経て、8月にまた富士、鈴鹿の順でレースをするのです。

 5〜6月と真夏ではコンディションも違いますし、各車のサクセスウエイト搭載量も変わるので勢力図には変化があると思いますが、それでも9月のSUGO戦までは少しマンネリ感が拭えません。

 そうはいっても、スーパーGTやスーパーフォーミュラといった日本の選手権はその性質上、レースカレンダーにバラエティ性を持たせることがなかなか難しくなっています。F1やMotoGPのように世界各国を転戦する訳ではありませんし、アメリカのインディカーのように国内に無数のレース場がある訳でもありません。

 現在スーパーGT、スーパーフォーミュラを開催しているサーキットは、前述の通り富士、鈴鹿、もてぎ、岡山、SUGO、オートポリスの6つ。かつてはMINEサーキットや仙台ハイランド、十勝スピードウェイなどで開催されていた時期もありましたが、今は行なわれていません。アメリカのようなストリートコースもありません。

 では、マンネリを脱するには何をすれば良いか? 例えば、それぞれのイベントにユニークなアイディアを持ち込むというのはどうでしょう? コースレイアウトを変えてみるというのもひとつでしょう。

 富士スピードウェイの場合、ダンロップコーナーと呼ばれるシケインをカットするレイアウトにしてみると、変化がつくかもしれません。鈴鹿も東コース開催という選択肢があります。東コースはスーパーGTのフルグリッド約40台を走らせるには狭すぎますが、かつてはトップフォーミュラのレースが開催されたことがあります。

 とは言ってもそれらはその場しのぎの策になってしまいます。やはり、海外戦を復活させることが鍵になるのではないでしょうか?

 スーパーGTではかつて、タイのブリーラムにあるチャーン・インターナショナル・サーキットで毎年レースが開催されていました。しかしコロナ禍の影響で2020年以降は開催されていません。また2020年はタイだけでなく、マレーシアのセパンでもナイトレースが開催される予定になっていました。

 現在は入国制限が撤廃されましたが、海外戦を開催するためには物流面とコスト面のハードルをどう乗り越えるかが依然として焦点になります。ただ、トヨタの豊田章男社長率いるルーキーレーシングがタイ25時間レースに水素カローラで参戦したことからも、メーカー側も海外に一定の関心を向けていると思われます。

 新しいサーキットでレースをするということは、F1のような世界を転戦する選手権ではよくあることです。アメリカを中心に戦うインディカーもそれは同じ。2021年にはナッシュビルでの市街地レースが初開催されましたし、ポートランドのような往年の開催地が復活するというパターンもあります。

 一方日本のレースでは、初開催のサーキットがもたらす不確実性や興奮を楽しむことができません。市街地レースが開催できれば良いのですが、行政や警察のハードルがあります。新しいサーキットや懐かしのサーキットでレースをするのが難しいのであれば、既存のコースでレイアウトを変えるというのが次の策でしょう。

 スーパーGTもスーパーフォーミュラも、ここ数年は同じサーキットでのレース中心でした。この先はより多くの観客に楽しんでもらうために、再び海外レースの実現に動いてもいいのではないでしょうか?

 
関連ニュース:

シェア
コメント

トムス、2023年スーパーGTマシンカラーリングを発表。2台揃ってデザイン一新「 あらゆる方向に挑戦していく力」を表現

LM corsa、吉本大樹&河野駿佑の4年目コンビでスーパーGT参戦へ。昨年未勝利のリベンジ誓う

最新ニュース

データで見るF1界の“日本対メキシコ”。選手層では日本に軍配も、実績はペレス一強?

データで見るF1界の“日本対メキシコ”。選手層では日本に軍配も、実績はペレス一強?

F1 F1

データで見るF1界の“日本対メキシコ”。選手層では日本に軍配も、実績はペレス一強? データで見るF1界の“日本対メキシコ”。選手層では日本に軍配も、実績はペレス一強?

”ウォーマーなし”のタイヤ導入へ、バーレーンGP後のテストにピレリ自信。ドライバーはまだまだ懐疑的な視線

”ウォーマーなし”のタイヤ導入へ、バーレーンGP後のテストにピレリ自信。ドライバーはまだまだ懐疑的な視線

F1 F1
サウジアラビアGP

”ウォーマーなし”のタイヤ導入へ、バーレーンGP後のテストにピレリ自信。ドライバーはまだまだ懐疑的な視線 ”ウォーマーなし”のタイヤ導入へ、バーレーンGP後のテストにピレリ自信。ドライバーはまだまだ懐疑的な視線

WEC開幕戦でPPデビューのフェラーリ、決勝は3位もトヨタに勝てないことは分かっていた?「我々は“目標”を達成した」

WEC開幕戦でPPデビューのフェラーリ、決勝は3位もトヨタに勝てないことは分かっていた?「我々は“目標”を達成した」

WEC WEC
セブリング1000マイル

WEC開幕戦でPPデビューのフェラーリ、決勝は3位もトヨタに勝てないことは分かっていた?「我々は“目標”を達成した」 WEC開幕戦でPPデビューのフェラーリ、決勝は3位もトヨタに勝てないことは分かっていた?「我々は“目標”を達成した」

F1サウジアラビアGP決勝分析|アロンソもまだまだ”余裕残し”だった? ラッセルを10秒引き離すことができた可能性

F1サウジアラビアGP決勝分析|アロンソもまだまだ”余裕残し”だった? ラッセルを10秒引き離すことができた可能性

F1 F1
サウジアラビアGP

F1サウジアラビアGP決勝分析|アロンソもまだまだ”余裕残し”だった? ラッセルを10秒引き離すことができた可能性 F1サウジアラビアGP決勝分析|アロンソもまだまだ”余裕残し”だった? ラッセルを10秒引き離すことができた可能性