日本語習得にも“本気”デス! 来日2年目、サッシャ・フェネストラズの日常

今季はスーパーフォーミュラとスーパーGT GT500クラスに参戦するサッシャ・フェネストラズ。日本在住の外国人ドライバーは、コロナ禍による外出自粛期間中、どんな暮らしをしているのか?

Sacha Fenestraz daily life

 昨年全日本F3でチャンピオンに輝き、2020年はスーパーフォーミュラとスーパーGT・GT500クラスにステップアップしたサッシャ・フェネストラズ。現在都内に居を構えているフェネストラズは、新型コロナウイルスの流行によりシーズン開幕が遅れているものの、自宅にて着々と実戦へ向けた準備を進めている。

 国内最高峰のレースカテゴリーに参戦する日本在住の外国人ドライバーは、この難しい期間の中でどんな生活をしているのか? 今回は弱冠20歳のフェネストラズの日常生活を紹介する。

【シミュレータ・トレーニング】

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Photo by: Motorsport.com / Japan

 レースが開催されず、実際のレーシングマシンに乗る機会がない中で、フェネストラズはヨーロッパから持ち込んできたシミュレータを自宅に設置し、トレーニングを行なっている。使っているシミュレータソフトは『iRacing』で、多い時は1日4時間ほど練習しているという。

 フェネストラズは現在、イギリスのロンドンに拠点を置くシミュレータ会社『COOLPERFORMANCE.COM』のシミュレータを使用している。同社の製品は、現役F1ドライバーのランド・ノリス(マクラーレン)やアレクサンダー・アルボン(レッドブル)を筆頭に、多くのトップドライバーが愛用している本格シミュレータ。それぞれのスタイルや好みに合わせて、ペダル位置など様々な要素が調節可能となっている。

 フェネストラズ曰く、元々は55インチ×3面という非常に大きなスクリーンだったというが、現在ではより小さなスクリーンを3面使用している。それでも180度という広い視野が確保されており、本人もこちらの方が快適に感じているという。

【フィジカル・トレーニング】

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 ステイホーム中のアスリートにとれば、フィジカルトレーニングは最重要課題。フェネストラズは「いつレースが再開されるか分からないから、モチベーションを高く保つのは難しい」と正直な心境を吐露していたが、トレーニングは毎日欠かさずに行なっている。

 フェネストラズはプッシュアップ(腕立て伏せ)といった基本的な自重トレーニングから、ダンベルを使った腕の筋力トレーニング、ダンベルスクワットなど、全身をまんべんなく鍛えている。その中でも、特に首のトレーニングには力を入れているとのこと。スーパーフォーミュラのマシンはコーナリングスピードが高く、その際にかかるGは極めて大きい。そのためフェネストラズは、専用の器具を使って首を鍛えている。この器具にはセンサーがついており、現在どのくらいの負荷がかかっているのかを確認することができるという優れものだ。

【料理】

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 フェネストラズは料理にも取り組んでいる。普段から週に2回ほど料理をしていたというフェネストラズだが、外出自粛となってからはほぼ毎日料理を作っているという。よく作る料理はラザニアやクレープといったヨーロッパの料理がほとんどだが、日本食にも関心があるようで、次のように話してくれた。

「お寿司の作り方を知りたい。とても難しいだろうけど、いつか作れたらいいなと思う」

「ランド(ノリス)なんかは魚が嫌いみたいだけど、僕はお寿司がとても好きなんだ。特に好きなのはネギトロ。だからマグロのお寿司も好きだ」

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【日本語学習】

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 そして何より我々が印象を強くしたのは、フェネストラズの日本語学習に対する“本気度”だ。現在彼は、国内レースにおける通訳として日本のファンにもお馴染みの伊藤ソニアさんを先生役に、週3回、それぞれ1時間ほどビデオ通話を介して日本語レッスンを受けている。フェネストラズはそのレッスンの流れを次のように話してくれた。

「基本的にはソニアさんが毎回、僕にたくさんの単語とその意味を教えてくれる。そしてそれを僕はノートに(アルファベットで)書き留める。レッスンの最後の方になると、前回習った単語を使って『僕は今日東京に行きました』といったような、短い文章を作る練習をするんだ」

「僕は話すことに焦点を当てているから文法の勉強などはやっていないけど、現在・過去・未来といった時制による変化・活用には力を入れて取り組んでいる」

「今取り組んでいるのはそういったところだ。これからはもっと長いフレーズを勉強したいと思っている」

 フランスとアルゼンチンにルーツを持つフェネストラズは、英語・フランス語・スペイン語の3ヵ国語を操る“トリリンガル”。そんなフェネストラズに日本語のどこに難しさを感じるかと尋ねると、彼は苦笑いしながらこう答えた。

「……全部かな(笑)」

「(日本語は)英語やスペイン語、そしてフランス語とはかなり異なる言語だ。第一にA、B、Cといったアルファベットを使わない。だから『こんにちは』『元気?』といったフレーズひとつひとつの作り方がヨーロッパの言語とは全く違うし、難しいよ」

「発音に関してはそんなに難しくないかな。その単語を読むことができるなら、うまく発音することができる。僕は英語、スペイン語、フランス語と3つの言語を話すことができるから、もしかするとそのおかげなのかもしれないね。スペイン語とちょっと発音が近いかもしれない」

 既に3つの言語を操る彼が何故4ヵ国語目として、それも世界的にかなり難しいと言われる日本語を習得しようとしているのか? その理由を彼はこう話してくれた。

「日本語を勉強して、話せるようになることは僕にとって非常に重要なことなんだ。僕のメカニックやエンジニアとより良いコミュニケーションが取れるようになるからだ。おそらくトヨタにとっても、僕が日本語を話せるというのは良いことだと思う」

 そんな彼のノートを見せてもらうと、そこには日本語の発音を記したアルファベットがびっしり。ひらがなや漢字の書き取りはできないが、あくまで目的としている“話すこと”に特化している様は、ある意味でその“本気度”の証かもしれない。

 以前から日本での長期的なレースキャリア継続に意欲を示していたフェネストラズ。そんな彼がサーキットで関係者と日本語で談笑する……そんなシーンが見られる日もそう遠くないかもしれない。

 

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