勢いが止まらないアントネッリ、5連勝に到達。F1史上10人目……データからは「チャンピオン獲得率100%」
アンドレア・キミ・アントネッリは、モナコGPで今季5連勝を達成。F1の歴史上、単一シーズンで5連勝を達成してタイトルを逃した例はない。
Andrea Kimi Antonelli, Mercedes
写真:: Sam Bagnall / Sutton Images via Getty Images
新レギュレーションのF1マシンでのテストが始まった2026年初頭、メルセデスが抜きん出たパフォーマンスを見せていたことから、人々はジョージ・ラッセルをタイトル獲得の最有力候補に挙げた。しかし蓋を開けてみれば、チャンピオンシップを独走しているのは2年目のチームメイト、19歳のアンドレア・キミ・アントネッリだ。
アントネッリは、ラッセルがマシントラブルなど様々な不運に見舞われる中、淡々と勝利を積み重ねている。第2戦中国GPで初優勝を飾ってからというもの、日本、マイアミ、カナダと立て続けに優勝。先日行なわれたモナコGPも、ライバル勢がトラブルやペナルティに苦しめられる中、ポールポジションからスタートしたアントネッリはほとんど“無風”。レース終盤の赤旗によりマージンがなくなり、グリッドからのスタンディングスタートを余儀なくされたことはやや逆風と言えたが、これまで苦手としてきたスタートをバッチリ決めて、難なくトップチェッカーを飾った。
その速さに加えて運を引き寄せる力もあり、さらには逆境への強さも見せているアントネッリ。これで連勝を5に伸ばした。70年を超えるF1の歴史の中で、5連勝以上を記録した例は過去14例。達成者は9名で(※シーズンを跨いでの記録も含む)、アントネッリは10人目となった。そもそも、初優勝から5連勝を飾ったドライバーはアントネッリが初であり、その時点で彼は歴史に残るスペシャルな存在なのだが……。
また、興味深いデータがある。上記14例の中で、単一シーズンで5連勝以上を達成したケースは12例存在するが、それを達成したドライバーは全て当該シーズンのワールドチャンピオンに輝いている。これはF1史上最年少王座を目指すアントネッリにとっても心強い前例と言える。ちなみに4連勝を達成したドライバーにまで対象を広げても、王座を逃したケースは2016年のルイス・ハミルトン(※当時メルセデス。チャンピオンはニコ・ロズベルグ)のみ。つまりアントネッリはカナダGPを制した時点で、統計上はかなり優位な立場にいたと言うことができる。
過去、F1で5連勝以上が達成されたケースは以下の通りである。
5連勝
ジャック・ブラバム(1960年第4戦オランダGP〜1960年第8戦ポルトガルGP)
Jack Brabham, Cooper T53-Climax
写真: Motorsport Images
クーパー所属のブラバムは、オランダから破竹の勢いで連勝を重ね、第7戦イギリスGPでは3戦を残して王座を確定。前年に続く2年連続チャンピオンを決めた。
ジム・クラーク(1965年第3戦ベルギーGP〜1965年第7戦ドイツGP)
Jim Clark, Lotus
写真: Motorsport Images
この年はロータスのクラークが圧倒したシーズンだった。クラークは開幕戦南アフリカGPで勝利すると、第2戦モナコGPはインディ500出走のため欠場。復帰した第3戦から5連勝を記録した。そのため、事実上の6連勝とも言える。しかも、モナコを欠場して参戦したインディ500では見事優勝を収めている。
ナイジェル・マンセル(1992年開幕戦南アフリカGP〜1992年第5戦サンマリノGP)
Nigel Mansell, Williams FW14B Renault
写真: Ercole Colombo
歴史に残る名車、ウイリアムズFW14Bを駆るマンセルは、開幕から5連勝を記録。そのうち4回がリカルド・パトレーゼとのワンツーであった。第6戦モナコGPでもマンセルは首位を快走していたが、終盤に異常を感じタイヤ交換のため緊急ピットイン。マクラーレンのアイルトン・セナに首位を譲った。マンセルはその後セナに追いつき、ふたりは後世に語り継がれる名バトルを演じるも、“絶対に抜けない”モナコで追い抜きは叶わず2位に終わった。
ミハエル・シューマッハー(2004年開幕戦オーストラリアGP〜2004年第5戦スペインGP)
Michael Schumacher, Ferrari F2004
写真: Peter Spinney / Motorsport Images
シューマッハーが5年連続・7度目のタイトルを手にした2004年は、歴史上最も支配的なシーズンのひとつと言える。フェラーリF2004を駆るシューマッハーは開幕5連勝を飾って幸先のいいスタートを飾ると、第6戦モナコGPでのリタイアを挟んで、第7戦から7連勝を飾ることになる(後述)。
ルイス・ハミルトン(2014年第13戦イタリアGP〜2014年第17戦アメリカGP)
Lewis Hamilton, Mercedes AMG F1 W05
写真: Sutton Images
2014年は、ハミルトンがメルセデス移籍後初となる王座を手にしたシーズンだ。この年のハミルトンは、第12戦ベルギーGPを終えた時点でチームメイトのニコ・ロズベルグに30点近い点差をつけられてしまっていたが、イタリアからの怒涛の5連勝で逆転。得点2倍という前代未聞のルールが採用された最終戦も制し、自身2度目のチャンピオンに輝いた。
ルイス・ハミルトン(2020年第11戦アイフェルGP〜2020年第15戦バーレーンGP)
Seven times world drivers champion Lewis Hamilton, Mercedes-AMG F1, 1st position, lifts his trophy on the podium
写真: Steven Tee / Motorsport Images
COVID-19のパンデミック真っ只中、夏から半年で17戦を開催する変則シーズンとなった2020年は、メルセデスのハミルトンが圧倒。終盤戦には5連勝を記録した。なおこの連勝の間にハミルトンは、ミハエル・シューマッハーが持っていた歴代最多優勝記録(91勝)を塗り替えている。
マックス・フェルスタッペン(2022年第12戦フランスGP〜2022年第16戦イタリアGP)
Max Verstappen, Red Bull Racing, 1st position, celebrates with his team in Parc Ferme
写真: Glenn Dunbar / Motorsport Images
前年にハミルトンとの死闘を制して初のチャンピオンに輝いたフェルスタッペンは、翌2022年シーズンを圧勝で飾り連覇を達成した。22戦中15勝を飾り、そのうちフランスからイタリアまでは5連勝を飾った。
6連勝
ミハエル・シューマッハー(2000年第14戦イタリアGP〜2001年第2戦マレーシアGP)
Michael Schumacher
写真: Ferrari Media Center
2000年にフェラーリ移籍後初のタイトルを手にしたシューマッハーは、終盤戦を4連勝で終えており、翌年も開幕2連勝を挙げて年跨ぎでの6連勝を記録している。
7連勝
アルベルト・アスカリ(1952年第3戦ベルギーGP〜1953年第1戦アルゼンチンGP)
Alberto Ascari, Ferrari 500
写真: Motorsport Images
F1黎明期の1952年と1953年にフェラーリで連覇を達成したアスカリは、この2年間に開催された17戦中15戦に出走し、11勝を挙げた。1952年に6連勝でシーズンを締め括り、翌年の開幕戦も優勝。当時F1世界選手権に組み込まれていたインディ500には出走しなかったため、年を跨いでの連勝記録は7でストップしたが、続くオランダ、ベルギーでも優勝しているため、事実上の9連勝を果たしている。
ミハエル・シューマッハー(2004年第7戦ヨーロッパGP〜2004年第13戦ハンガリーGP)
Podium: second place Rubens Barrichello. Ferrari, Race winner Michael Schumacher, Ferrari, third pla
写真: Sutton Images
2004年を開幕5連勝でスタートさせたシューマッハーは、第7戦から7連勝を記録。これは単一シーズンにおける当時の最長連勝記録であり、以降9年間更新されなかった。
ニコ・ロズベルグ(2015年第17戦メキシコGP〜2016年第4戦ロシアGP)
Podium: winner Nico Rosberg, Mercedes AMG F1 Team, second place Sebastian Vettel, Ferrari, third pla
写真: Pirelli
2015年第16戦アメリカGPでハミルトンが同年のタイトルを確定させた後、ロズベルグは終盤3レースで全て優勝。翌2016年も開幕から4連勝を記録して年を跨いで7連勝となり、自身初のワールドチャンピオンに向けて幸先の良いスタートを切った。
9連勝
セバスチャン・ベッテル(2013年第11戦ベルギーGP〜2013年第19戦ブラジルGP)
World Champion Sebastian Vettel, Red Bull Racing
写真: Steve Etherington / Motorsport Images
シューマッハーが保持していた連勝記録を塗り替えたのが、レッドブルで当時3連覇中だったベッテルだった。2013年シーズン後半戦はほぼ敵なしで、第11戦から最終戦まで9連勝。そのうち6回がポール・トゥ・ウインだった。
マックス・フェルスタッペン(2023年第16戦日本GP〜2024年第2戦サウジアラビアGP)
Max Verstappen, Red Bull Racing RB20
写真: Erik Junius
マックス・フェルスタッペンは、2023年にF1史上最高のシーズンを送った。シーズン序盤〜中盤まで続いていた連勝はシンガポールGPで5位に終わったことで途絶えたが、第16戦日本GPから最終戦まで7連勝。翌年も開幕2連勝を果たした。
10連勝
マックス・フェルスタッペン(2023年第5戦マイアミGP〜2023年第14戦イタリアGP)
Max Verstappen, Red Bull Racing RB19
写真: Erik Junius
フェルスタッペンは前述の9連勝の前に、前人未到の10連勝を記録している。この年は最終的に22戦19勝を挙げ、年間勝利数と勝率でも歴代最高記録を打ち立てた。これらの記録が塗り替えられる日は果たして来るのだろうか? そして、勢いが止まらないアントネッリがこの記録にどれだけ近付くのだろうか?
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