インタビュー

「女性であることはマイナスじゃない」Juju、14歳は初の海外挑戦で濃密な1年に

2020年は戦いの舞台をヨーロッパに移し、デンマークF4に参戦したJuju(野田樹潤)。精神的にもタフだったという海外挑戦1年目を振り返り、大きく成長できたと語った。

Juju(野田樹潤)、野田英樹 Hideki Noda

 元レーシングドライバーでF1参戦経験もある野田英樹の娘Juju(野田樹潤)は、10代前半にして日本国内でフォーミュラカーをドライブするという、他にはない経験を積んできた。そして14歳となった2020年、本格的な戦いの舞台を求めて渡欧し、デンマークF4選手権にフル参戦した。

 彼女にとって初の海外挑戦、そして初の本格フォーミュラカーシリーズ参戦となったが、ユランズリンクで行なわれた開幕戦でいきなりポールトゥウィンを飾ったのは既報の通り。父娘共々、当初は苦戦することを予想していたというが、良い意味でそれを裏切る結果を残し、これ以上ないシーズンのスタートを切った。

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 しかしながら第2大会以降はライバルチームからの厳しいマークに晒されるようになった。第1大会に引き続き、第2大会、第3大会でも予選でポールポジションを獲得したJujuだが、いずれも他車と接触して後退するなど、思い通りのレースをさせてもらえないことが続いた。結局コロナ禍などの影響もあり、3大会9戦を消化した時点でシーズンは打ち切りに。Jujuは1勝・3ポールポジションでランキング6位という結果に終わった。

「全てのレースで一番速いタイムが出せたことは自信になりました。ただ、逆に速さはあっても勝てないレースもありましたし、速いだけでは勝てないんだなということも分かりました」

 そうシーズンを振り返ったJuju。精神的にもタフな1年だったというが、それが成長に繋がったと冷静に分析してみせた。

「良いことも悪いこともたくさん経験して、メンタル面でも成長できたシーズンでした」

「日本だと当たらなかったような壁にぶつかることもありましたが、それはいつか経験することだと思うので、早いうちに経験できたのは良かったと思います」

 自分にとって初めての土地、初めてのサーキットながら光る速さを見せたJuju。そんな彼女の海外挑戦1年目を、父であり監督でもある野田英樹はどう評価しているのだろうか?

「シーズン開幕前にはフランス、イタリア、スペインなどに出向き、色んなサーキットを走らせました。それを手を抜かずにやった成果がデンマークF4でのレースに繋がったと思います」

 そう野田監督は語った。

「それをやらせてあげたから、ということではなく、本人が与えられた環境の中で努力をしてきたからこそだと思います。まだまだ詰めるところはたくさんありますが、F4レベルではトップクラスのドライバーになれたと思います」

 気になるのはJujuが2021年シーズンに参戦するカテゴリーだ。野田監督曰く、来季も引き続きFIA F4レベルの選手権を主戦場とすることを計画しているが、強者揃いのヨーロッパに留まるか、あるいはオーバルレースや市街地レースでの経験が積めるアメリカに渡るか、その二者択一であるという。ただ、コロナ禍による不透明な世界情勢もあり、詳細はまだ確定していないとのことだ。

■“女性であること”がマイナスだとは思わない

 2006年2月生まれ。今年14歳になったばかりのJujuが最初に「プロのレーシングドライバーになりたい」と志したのは5歳の時だった。レースに限らず様々な選択肢を提示してあげたいという両親の親心もあり、小学校入学後は体操、水泳、空手、チア、サッカーなどにも取り組んできたJujuだが、どれも続かなかったという。

「色んなことをやりましたが、どれも続きませんでした。最初は楽しいんですが……」とJuju。

「小さいながらも、習い事とレースは何か違うなと感じていました。習い事は楽しければいいと思っていましたが、レースでは絶対に勝ちたいという想いがありました。サッカーなどで負けてもそんなに悔しくないのに、レースだと何故かめちゃくちゃ悔しくて……」

 “楽しい”の先にある“悔しい”という感覚が原動力となり、Jujuは5歳の頃からブレずに突き進んできた。ただ、モータースポーツの世界は現在こそ多様化が叫ばれているものの、今でも圧倒的な“男社会”であることは否めない。そういった環境の中で上を目指して戦っていくことを、彼女はどう考えているのか?

「確かに『女性だから』という目で見られることもありますけど、それが全部悪いこと繋がっているかと言われればそうではありません」とJujuは言う。

「マークがキツくなったり、ということはありますが、今メディアから注目してもらっているのも“女の子”という肩書きがあるからかもしれないですし、女の子が勝つことで他の女の子にも影響を与えられるかもしれません。だから(女性であることが)マイナスな点だとは思っていません」

 2021年も世界との戦いを続けていく予定のJujuは最後に、自身が見据える目標について教えてくれた。

「やるならトップのカテゴリーを目指したいと思っています」

「その途中までたどり着くのも大変だと思います。自分は今年1年ヨーロッパで走っただけなので、まだまだ経験も浅いし、世界の中で自分の実力がどれだけのものなのかも全然分かりません。でも中途半端なところで終わってはそこまでの努力が無駄になりますし、中途半端なところで勝っても私は納得しません」

「これからも楽な道ではないと思いますが、それが不可能だとは思っていません」

 

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