スーパーフォーミュラ第2回開発テストで天然素材カウルが登場。弱点補うため、カーボン等との“ハイブリッドカウル”が現実的?
スーパーフォーミュラの第2回開発テストが鈴鹿サーキットで行なわれ、その初日午前にはバイオコンポジット素材のカウルが初投入された。
カーボンニュートラルの実現、エンターテインメント性向上などのために実施されている、スーパーフォーミュラの開発テスト。富士での第1回テストではタイヤ、燃料、空力のテストが行なわれ、開発ドライバーの塚越広大と石浦宏明から様々なフィードバックがもたらされた。そして第3戦鈴鹿の決勝レース翌日からスタートした第2回テストでは、初日にBcomp社のバイオコンポジット素材が使用されたマシンが走行した。
使用されているバイオコンポジットの素材は、自然に生育した亜麻。周知の通り、現在のボディにはカーボンファイバーが用いられているが、天然繊維のパーツに置き換えることで二酸化炭素排出量を大幅に削減できるため、カーボンニュートラルに貢献できるという訳だ。
ただ、その新素材に関しては課題もいくつかある様子。初日午前の走行を終えて、永井洋治テクニカルディレクター(TD)は次のように語っていた。
「Bcomp(社製の天然素材)の弱いところは3つあります。熱に強くない点、絶対的な強度がカーボンより低い点、繊維が水を吸いやすいという点です。今回は完全に麻で出来たものに加え、それらの課題に対して手を打った3層構造の“ハイブリッド版”を持ち込みました」
SF19開発車両
Photo by: Motorsport.com / Japan
永井TDの言うハイブリッド版は早速午前の走行で用いられた。具体的には、エンジンカウルに関してはBcomp社製の天然素材の裏にリサイクルカーボンとカーボンが重なっており、サイドカウルは天然素材の裏に、コルクとカーボンが層をなしている。
夕方からの走行ではこれらの補強素材がない“フルBcomp”のカウルもテストされ、その違いが確認される予定だが、永井TDはこの“フルBcomp”のカウルを導入することは難しいと考えているという。彼は次のように語った。
「Bcompだけでは難しいというのが個人的な見解です。麻そのものの強度には限界がありますから」
「もちろん、将来的には100%Bcompというのが理想ですが、0か1かの問題ではありません。今回のハイブリッド版はカーボンニュートラル素材が3分の2入っていることになるので、パーセンテージで言えば約70%です。0になってしまうよりは、そこからスタートしてそのパーセンテージを上げていけば良いと思いました」
「それにBcomp100%だと、使える場所が限られます。大きな力を受けるリヤウイングなんかは(Bcomp100%は)まず無理だと言われています。(天然素材の割合が)3分の2のリヤウイングは難しくても、2分の1ならどうなのか?……そういったことができるという意味でも、ハイブリッドという考えはアリだと思います」
「モノコックは正直厳しいので、フルカーボンになると思いますが、他にカーボンニュートラル素材を混ぜながら、カーボンの割合を減らしていくという選択肢になっていくと思います」
また永井TDはハイブリッド版のカウルについて、既存のカーボン素材などで補強する形ではなく、天然素材同士のハイブリッドカウルを作製し、カーボンニュートラルを実現するという選択肢もあるのではと語った。
「今話しているのは、そういうもの(天然素材)同士のハイブリッドはできないものかという話です」
「今はナノセルロースなど、カーボンニュートラル系の素材は色々とあって、それぞれ強みと弱みがあります。それぞれの課題を補うような考え方もあっていいと思います。将来はその方向性も試すべきと思っています」
なお、この新素材に関しては、来シーズンに早速導入できる箇所から導入されていくという。永井TDの言うように、段階的にカーボンニュートラル素材の割合を増やしていくようなアプローチになりそうだ。
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