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驚異のレースペースで完勝のau TOM'S。ライバルが苦しんだ厄介な“ピックアップ”をいなす術とは

スーパーGT第2戦富士では多くの車両がピックアップに悩まされたようだが、優勝したau TOM’S GR Supraがその影響を最小限に抑えられたのにはどんな要因があったのだろうか。

#36 au TOM’S GR Supra

#36 au TOM’S GR Supra

写真:: Masahide Kamio

 富士スピードウェイで行なわれたスーパーGT第2戦では、シリーズ4連覇を狙う36号車au TOM’S GR Supraが2番手スタートから優勝。第1スティントこそポールスタートの14号車ENEOS X PRIME GR Supraに逃げを打たれたが、第2スティントで20秒以上あった差を数秒に縮めると、2回目のピットストップで逆転。最終第3スティントも隙の無い走りでENEOSを寄せ付けなかった。

 勝因はやはり、高い水準で安定したレースペースにある。

写真: Motorsport.com Japan

 上のグラフは、今回の3時間レースにおけるau TOM’SとENEOSのレースペースを示したもので(縦軸がラップタイム、横軸が周回数)、オレンジ色がau TOM'S、赤色がENEOSだ。ふたつ黒丸で囲んだ箇所はそれぞれ1回目、2回目のピットストップのタイミングで、1回目のピットストップ後に見られるペースの下落はFCY(フルコースイエロー)によるものだ。

 まず第1スティントから見ていくと、福住仁嶺がステアリングを握るENEOSはau TOM'Sよりも明らかにペースが速く、これが20秒以上のギャップ構築に繋がった。逆に言えば山下健太が乗るau TOM'Sはかなりペースに苦戦しているように見受けられるが、この時山下はペースが上がらない事象に悩まされたと明かしており、どうやらタイヤトラブルがあったと見られている。

 ちなみに第1スティントは両車極端なペースの乱高下が一部で見られるが、これはレース序盤は十数台が連なっているGT300クラスの集団に追い付くというシチュエーションがあるためだ。

 そしてレースの鍵となったのが第2スティント。ここで山下からドライバー交代した坪井翔は、同じく大嶋和也に交代したENEOSとの差をじわじわと縮めていく。この時大嶋は、タイヤにタイヤかす等が付着してペースが落ちるピックアップに苦しんでいたと話している。実際グラフを見ると、ENEOSは1分30秒台後半〜1分31秒台前半と、au TOM'Sにマッチするペースで走れている時間帯もありながら、時折1分31秒台後半〜1分32秒台まで落ち込んでしまっている。

 大嶋は次のように語る。

「タイム差を見ている限り、クリーンエアが取れればペースはあまり変わらないんですが、(GT300に)引っかかるタイミングでどうしてもピックアップを拾ってしまって、それが取れるのに時間がかかった結果、悔しいスティントになってしまいました」

#14 ENEOS X PRIME GR Supra

#14 ENEOS X PRIME GR Supra

写真: Masahide Kamio

「GT300を抜く時も、ラインを大きく外しているわけではありませんが、それでもピックアップがついてしまいます。淡々とクリアに走れるラップが何周か続くと同じタイムで走れていたので、タイム差はピックアップの影響だと思います」

 ピックアップの症状は、各車のタイヤかすがコース上に散らばるレース中盤以降で顕著となる。ENEOSは大島から福住に再度ドライバーチェンジするも、最終スティントでもピックアップの影響と思われるペースの下降が見られた。福住はau TOM'Sをキャッチアップするためにソフト側のタイヤで出ていったというが、柔らかいゴムは異物を拾いやすい傾向にあるとも言われる。

 ピックアップに苦しんだのはENEOSだけではない。HRC(ホンダ・レーシング)の開発陣も、全車というわけではないものの「ピックアップで困ったと言っている車両もあった」と話している。その中で、au TOM'Sが安定したペースで周回できた要因にはどういったものがあるのだろうか? トムスの吉武聡チーフエンジニアは、車両セットアップの観点から次のように解説する。

「一番ピックアップに効くのは単純に“速いクルマ”です」

#36 au TOM’S GR Supra

#36 au TOM’S GR Supra

写真: Masahide Kamio

「アンダーステアもオーバーステアもないクルマが、基本的にピックアップがつかないし、ついても取れやすいです。アンダーもオーバーもないクルマをいかに作るかなんです」

 そもそも、GT300との混走である以上、レース中は様々なラインを通る必要があり、異物の付着を完全にゼロにすることはできない。したがって、ピックアップをいかに早く除去できるかもポイントとなるが、そのためにはマシンバランスが重要になると吉武エンジニアは言う。例えばリヤのグリップが足りないオーバーステアのマシンでリヤタイヤにピックアップが着くと、リヤグリップがさらに低下し、まともに走らせられなくなる上、適切な荷重をかけられないので異物を押し飛ばすことも困難になる。まさに悪循環に陥るのだ。

 吉武エンジニアはさらにこう語る。

「タイヤの使い方の要素もあります。ゆっくり走っちゃうとピックアップが付いちゃうという事もあるので、ある程度プッシュをしながら荷重をかけていかないと取れません。ペースが遅いクルマほどピックアップがついて、また遅くなって……という悪循環になってしまいます」

 ピックアップに悩まされる中盤、終盤のスティントを担当した坪井も、36号車はピックアップに強いクルマ作りを進めてきていたと話す。そして坪井自身としても、ドライビングで異物を取り除くノウハウは感覚的に持ち合わせているのだという。

坪井(左)と吉武エンジニア

坪井(左)と吉武エンジニア

写真: Masahide Kamio

「実際にセカンドスティントでピックアップが増え始めました。最初はタイヤや燃費をセーブしようと様子見でしたが、思ったより14号車との差が縮まらなかったので、このままじゃまずいと思って走り方を色々変えていました」

「そのタイミングでピックアップも増えてきて、みんなのラップタイムの上下が激しくなって、クリアラップだと30秒台に入るけど、(GT300に)引っかかると32秒台に落ちるという感じになっていました。32秒台まで落ちると30秒台に復活させるのは大変なので、引っかかった時のアベレージタイムを上げるのが大事になります」

「そこは300のトラフィック処理も本当にうまくできたと思いますし、ピックアップを取るのも結構得意な方かなと自分でも思っているので、自分自身の強みをしっかり発揮した両スティントだったかと思います。言葉にするのは難しいですが、感覚的にこうしたらできるという答えを自分の中で持っているので、そこをしっかり出し切ることができました」

 開幕2連勝を達成したau TOM'Sは、シーズン3戦目(※第3戦延期につき次戦は第4戦)で早くもサクセスウエイトが80kgに到達。今季からの規定で、ウエイト搭載50kg+燃料流量リストリクター1段階ダウン+給油リストリクター1段階ダウンのハンディキャップとなる。エンジンパワーが下がるだけでなく給油時間も長くなってしまうが、そんな足枷を感じさせない走りで上位に食い込むことがあっても、もはや驚きではない。

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