フォーミュラカーの真の魅力は体験しなきゃ分からない! トムスの”フォーミュラ・カレッジ”に潜入
2021年5月からスタートした『トムス・フォーミュラ・カレッジ』。その先行体験会に参加し、夢のフォーミュラカーをドライブしたmotorsport.com編集部員は、フォーミュラカーのどこにすごさを感じたのか?
フォーミュラカーに乗りたい。これはF1ファン、モータースポーツファンが一度は夢見たことではないだろうか。しかしーーあなたの夢は何ですか?ーーそう聞かれた時、それが咄嗟に脳裏に浮かんだ人はそういないだろう。無理もない、それはあまりに現実的ではないからだ。
先日、トムスが『トムス・フォーミュラ・カレッジ(TFC)』なるサービスを開始することを発表した。フォーミュラカーをドライブしたいという人の夢を叶えるため、走行体験をはじめとしたサービスを展開するという。参加費用は6万6000円〜。フォーミュラカーに乗ることが現実的ではなかった人たちにとっても、その“夢”が手の届くところまで降りてきたのだ。
このTFCの先行体験会に、小さい頃からのF1好きであるmotorsport.com編集部員が参加した。体験会の1週間前に運転免許を取得したばかりであり、教習所の“仮免許”以外では公道で車を走らせた経験は一切なし。類を見ない形で、長年の夢であったフォーミュラカーデビューを果たすことになった。
体験会当日、富士スピードウェイのP7駐車場に鎮座していたのは、赤と青にそれぞれ塗られた2台の『DOME F110』。DOME F110と言えば、スーパーGTと併催されている『FIA F4 JAPANESE CHAMPIONSHIP(FIA F4)』で使用されているマシンだ。
トムス・フォーミュラ・カレッジ 先行体験会
Photo by: Masakatsu Sato
FIA F4は、F1、F2、F3……と続くフォーミュラカー選手権のピラミッドでは下層にあたる、いわゆる“入門カテゴリー”で、明日のプロを目指す若手ドライバーや、アマチュアの“ジェントルマンドライバー”がこの車両を駆って参戦している。現在スーパーGTやスーパーフォーミュラで活躍している坪井翔や宮田莉朋は、トムスからFIA F4に参戦してチャンピオンを獲得しており、現在アルファタウリからF1に参戦している角田裕毅も、ここで王者に輝いた後、ヨーロッパへと巣立っていった。
この日の体験会でまず行なわれたのは、実際にコックピットに座ってのシート位置の確認など。フォーミュラカー特有の狭いコックピットに乗り込むと、何とかシートに収まりはしたものの、脚が邪魔をしてステアリングが切れないため、さらに幅広なシートに替えてもらうことになった。これにより窮屈さから解放されたことで、ゆったりとした着座姿勢が実現し、問題なくステアリングを切れるようになった。体重制限ギリギリでの参加だったがなんとか命拾いした。
コックピットで着座位置などを確認。体をガッチリ固定するシートベルトには縛られているような感覚だ。
Photo by: Masakatsu Sato
続いて走行に向けての操作説明などがはじまった。基本的にギヤチェンジはパドルシフトで行なうが、発進時は1速に入れた状態で足元にあるクラッチペダルを使いながら発進する必要がある。繰り返すが、1週間前にマニュアルで免許を取得したばかり……教習所で連日マニュアル仕様の教習車を乗り回していたため多少の自信はあったが、エンジンを始動していきなりのエンスト。周りから向けられる心配そうな視線に気まずさと焦りを感じながらも、何とかマシンを始動させることに成功し、パイロンで区画された特設コースへと繰り出していった。
まずは全長300mほどのオーバルレイアウトを5分ほど走ることに。慎重に加速と減速をしながら感覚を確かめた後、直線上で少しアクセルを煽ってみると、ものすごいレスポンスでシートに身体が叩きつけられる感覚と共に、速度計は一瞬にして60km/hに。慣れてくるとトップスピードは80km/hまで伸びた。これはわずか100mほどしかない直線で、しかも無理のない範囲で加減速した結果の速度である。
少しアクセルを踏むだけでまるでベタ踏みしているかのような加速を味わえる
Photo by: Masakatsu Sato
約5分の走行を終えた後は一旦ピット(というよりも退避路)に戻り、間髪入れずに次のプログラムに向けて再発進……と行きたいところだったが、今回もエンスト。しかも何度もエンストしてしまった。数週間前の教習では、軽くアクセルを煽りながら少しクラッチペダルを戻せば半クラッチ状態となり簡単に車が動き出したが、フォーミュラカーはそうもいかない。
一般的な乗用車と比較してパワーウエイトレシオの高いレーシングカーで使用されているクラッチは、小径化、軽量化された上で、耐久性を高めるために通常よりも圧着力や摩擦力が強くなっており、それに伴い素早いシフトチェンジが可能となっている。ただ、それは言い換えると“半クラッチ”となる領域が狭いということになる。また、レース用のスリックタイヤは市販車のタイヤと比べてグリップ力が高いため、エンストせずに発進するためには一般車よりも高い回転数(3,000回転程度)を保ち、一般車よりも丁寧なクラッチ操作をする必要があるのだ。
難易度の高いフォーミュラカーの発進に苦戦。何度もエンストする恥ずかしさに苦笑いするしかなかった
Photo by: Masakatsu Sato
そんなこんなでようやくマシンは動き出し、ふたつ目のプログラムに入っていった。今度は2本あるオーバルの直線の片方にあるパイロンを使い、スラロームをしていく。そこで感じられるのはフォーミュラカー特有の“軽快さ”だ。わずか600kgほどしかない車両でマシンを左右に振るのは実に心地良い。また、カーブへの進入で多少「オーバースピードかな」という感覚があっても、慌ててブレーキを踏み込まずともステアリングを切るだけで簡単に向きが変わる。教習所では教官に「スピードを出した状態でカーブを曲がるのは危険ですからね」と言われていたので何とも言えない罪悪感があったが、このF4マシンは朝飯前と言わんばかりにそれをこなしてくれた。
フォーミュラカー初心者でもその高い運動性能を存分に体感できる
Photo by: Masakatsu Sato
そして迎えた最後のプログラムは、S字セクションが設けられたテクニカルなレイアウトでのフリー走行。ここでは単純な加減速やスラロームだけではなく、ブレーキングや立ち上がりでのラインを変えてみたりと、フォーミュラカーを駆る醍醐味を存分に味わいながら走ることができる。
その間アドレナリンは出っぱなし。しかし、当のDOME F110は最後の最後まで余裕そうで、ステアリングやペダルを介しての操作にも涼しい顔。持てる力の10%も出していないような様子であった。普段サーキットを“全開で”疾走するマシンが駐車場をクルージングしているのだからそれは当たり前ではあるのだが、「コイツが本気を出したら一体どうなるんだ……」という恐ろしさを感じると共に、それ以上に「いつかコイツを本気にさせてみたい」という感情にさせられた。
フォーミュラカーでコースイン。多くのファンにとって夢の瞬間かもれない。
Photo by: Masakatsu Sato
あなたもこのマシンに乗れば、多くのレーシングドライバーがフォーミュラカーの虜になる理由が分かることだろう。これは理屈ではない。実際に乗って、五感で味わった者にしか分からない。スピード感、音、振動、匂い……それら全てが非日常的で、一瞬にして興奮に包まれる。そして改めて、このマシンの100%の力を解放させて戦うレーシングドライバーへの尊敬の念や憧れも、同時に感じられることだろう。
今後も定期的に開催されていく予定だというトムス・フォーミュラ・カレッジ。ひとり、またひとりとモータースポーツファンの夢が叶えられていく……そんな姿を想像すると、こちらまでワクワクしてくる。
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