F1・ザ・ルーツ:2022年圧倒的な強さでF1を制圧。レッドブルの原点は、伝説のドライバーが立ち上げたあのチーム

今やトップチームの一角の座をほしいままにしているレッドブル。しかし2008年までは中団グループの1チームに過ぎなかった。そのチームの原点は、1997年にある。

Max Verstappen, Red Bull Racing RB18

 2022年シーズンにマックス・フェルスタッペンとセルジオ・ペレスのコンビで15勝を挙げ、圧倒的な強さでコンストラクターズタイトルを獲得したレッドブル。フェルスタッペンもドライバーズタイトルを獲得しており、チームとしては2013年以来となるダブルタイトル獲得となった。

 そのレッドブルの原点は、1997年に遡る。

 この1997年、ある新チームがF1にデビューした。スチュワート・グランプリである。このスチュワート・グランプリは、国際F3000に参戦していたポール・スチュワート・レーシングを母体に設立されたチーム。完全に新規参戦チームとしてF1に挑んだ。

Rubens Barrichello, Stewart Grand Prix Ford SF-1

Rubens Barrichello, Stewart Grand Prix Ford SF-1

Photo by: Sutton Images

 その1年目は、ルーベンス・バリチェロとヤン・マグヌッセン(現ハースのケビン・マグヌッセンの父親!)のコンビ。フォードのZetec-Rエンジンをワークス待遇で供給され、新規参入したブリヂストンタイヤを履いた。

 雨となったモナコGPでは、バリチェロが2位入賞。しかしこれが、シーズンを通じて唯一の入賞となった。

 翌年も同じ体制で参戦したが、第8戦フランスGPからはマグヌッセンに代わりヨス・フェルスタッペン(マックス・フェルスタッペンの父親!)がドライブ。しかしフェルスタッペンは入賞を果たすことができず、バリチェロとマグヌッセンによる合計3回の入賞に留まった。

 ただ1999年には躍進を遂げ、4回の表彰台を獲得。フェルスタッペンの後任としてチーム加入を果たしたジョニー・ハーバートが、ヨーロッパGPでチームに初勝利をもたらした。

 この年の6月、アメリカの自動車メーカーであるフォードがスチュワートを買収。傘下のブランドであるジャガーの名前を冠し、ジャガー・レーシングとしてF1への参戦をスタートさせることになった。

Christian Klien, Jaguar R5

Christian Klien, Jaguar R5

Photo by: Rainer W. Schlegelmilch / Motorsport Images

 ジャガーの名で参戦を開始した2000年。バリチェロの後任としてエディ・アーバインがフェラーリから移籍。ハーバートとコンビを組むことになった。しかし1999年の好調ぶりから一変し、成績は低迷。2001年のモナコGPと2002年のイタリアGPではアーバインが3位表彰台を獲得したもののそれが最高位で、コンストラクターズランキングでも6位以上になることはできなかった。

 2004年のモナコGPでは、映画のPRとしてノーズ先端にダイヤモンドを取り付けて走ったが、そのマシンを走らせていたクリスチャン・クリエンがクラッシュ。ノーズの付けられていたダイヤモンドを紛失するという”事件”が起きたのはあまりにも有名だ。

 成績低迷に伴いフォードは、2004年限りでF1を撤退することを決めた。このジャガーを買収する形で誕生したのが、レッドブル・レーシングである。

David Coulthard, Red Bull Racing

David Coulthard, Red Bull Racing

Photo by: Lorenzo Bellanca / Motorsport Images

 エナジードリンクのメーカーであるレッドブルは、1990年代中頃からザウバーにスポンサードするなどしてF1への関わりをスタート。ザウバーとの関係は長く続いたが、アロウズにスポンサード先を移し、そしてついにF1チームを持つにまで至った。

 参戦2年目の2006年、モナコGPでデビッド・クルサードが”スーパーマン”のカラーリングを施したマシンで3位入賞。スーパーマンの象徴とも言えるマントを纏った姿で表彰台に上がった。

 しかしレッドブルは、当初は中団グループの一角でしかなく、毎年1回表彰台を手にするレベルのチームだった。しかしこのチームには、重要な人物が加入していた。エイドリアン・ニューウェイである。

 ニューウェイはレイトンハウス、ウイリアムズ、マクラーレンと渡り歩き、数々のチャンピオンマシンを世に送り出していた。そのニューウェイが新たな活躍の場に選んだのがレッドブルだった。そしてエンジニアやメカニックなどには、ベネトンでチャンピオンを獲得した経験を持つ面々が揃っていた。トップを狙う体制は徐々に整いつつあったのだ。

 転機が訪れたのは2009年。レギュレーションが大きく変わり、マシンのエアロコンセプトが一新。さらに、運動エネルギー回生システム、いわゆるKRESの導入が許可された。

 レッドブルはKERSを投入しなかったが、開幕から速さを発揮。この年レッドブルに加入したばかりのセバスチャン・ベッテルと、チーム在籍3年目のマーク・ウェーバーのコンビで、ホンダを引き継いだブラウンGPとタイトルを争った。

 この年は最終的に敗れたものの、一気にトップチームの仲間入りを果たした。そして2010年から2013年まで、ダブルタイトルを4年連続で獲得。2019年からホンダをパートナーに迎えると、2021年にフェルスタッペンによりタイトル奪還。2022年にも強さを発揮したのは皆さんご存知の通りだ。

 現在のメルセデスもそうだが、このレッドブルも2009年のレギュレーション変更を転機に一気にトップチームの仲間入りを果たしたチームである。

 さて、次にレッドブルらのように一気にトップチーム入りするチームは現れるのだろうか?

■スチュワート:1997年〜1999年
エンジン:フォード/コスワース(1997〜1999年)
主なドライバー:ルーベンス・バリチェロ、ジョニー・ハーバート、ヤン・マグヌッセン、ヨス・フェルスタッペン

■ジャガー:2000年〜2004年
エンジン:フォード/コスワース(2000〜2004年)
主なドライバー:エディ・アーバイン、ジョニー・ハーバート、ペドロ・デ・ラ・ロサ、マーク・ウェーバー

■レッドブル:2005年〜
エンジン:コスワース(2005年)→フェラーリ(2006年)→ルノー(2007年〜2015年)→TAGホイヤー/ルノー(2016年〜2018年)→ホンダ(2019年〜2021年)→レッドブル・パワートレインズ/HRC(2022年〜)
主なドライバー:セバスチャン・ベッテル、マックス・フェルスタッペン、マーク・ウェーバー、ダニエル・リカルド、セルジオ・ペレス、デビッド・クルサード

 
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