松田次生を虜にした新幹線はどれ? 趣味の鉄道を語り尽くす!【連載:レース以外のこと聞いてみた】

レース関係者がハマっている趣味や、レース以外に情熱を傾けているものを特集する本企画。今回は、レース業界屈指の鉄道好きで知られる松田次生に、その魅力について語ってもらった。

松田次生を虜にした新幹線はどれ? 趣味の鉄道を語り尽くす!【連載:レース以外のこと聞いてみた】
Listen to this article

 モータースポーツ業界に携わる者たちは、根っからのレース好きが多く、趣味が高じて現在の職に就いている者が多い。とはいえ、そんな彼らにもレース以外の趣味があったり、レース以外でも情熱を傾けるものがあったりする。本企画では、レース関係者たちの“好き”にスポットライトを当てていく。

 今回インタビューしたのは、現役のスーパーGTドライバーでもあり、スーパーフォーミュラではKCMGの監督を務める松田次生。松田と言えば、レース界随一の鉄道好きで有名だ。小さい頃からの“レース好き”でありながらも、“乗り物”と呼ばれるものには疎い筆者が、鉄道の魅力について聞いた。


ーーそれでは本日はよろしくお願いします。レース業界では松田さんの鉄道好きは有名ですが、鉄道にハマったきっかけは何だったのですか?

「元々は新幹線が好きなんです。速度域も僕たちが走らせているレーシングカーと近いですし、そういうところからまず新幹線が好きになりました。その中で、(在来線の)電車も好きになっていきました」

「鉄道のルーツをたどると、技術的に面白い発見が結構あるんですよね。例えば日本の新幹線は、世界記録を塗り替えているものも結構あるんですよ」

ーー記録というと、最高速ですか?

「最高速です。僕たちが小さい頃は230km/hとか240km/hくらいしか出ていませんでしたが、今や東北新幹線で320km/h、山陽新幹線も300km/h近く出ていて、東海道新幹線も285km/hで走っています」

「どうしたら速くなるかという部分では、空力をけっこうやっているんです。僕は飛行機も好きですが、例えば旅客機も燃費を稼ぐためにウイングレットを付けたりしています。そういう工夫を見るのが好きですね」

ーーハマったきっかけや着眼点がなかなか高度ですね……。小さい頃からお好きだったんですか?

「そうですね。何であんなに速いんだろう?って思っていました。新しい車両が出ると、どんな新しい技術が入っているんだろうと、気になってしまいますね。新幹線は今N700Sという車両が出てきていますが、0系とかとは先端が全然変わっていて……」

ーー0系というと、どんな形ですかね……(スマホで検索しながら)

「0系も流線型ではあったのですが、今とは全然違いますね」

0系

0系

Photo by: Motorsport.com / Japan

ーーあ、確かに違いますね。ちょっと丸いというか。松田さん的にどちらがお好きですか?

「僕は最新のモデルの方ですかね。0系も形自体は好きですが、最新の車両はもっと先端が長くなっていて……その点では、500系も良いですね。当時(1997年デビュー)300km/hで運用するというのは、世界的に見てもなかなか珍しいことでした。でも正直、空力を考えているので乗ると狭いんですよ。荷物も乗らないし」

ーースポーツカーと同じですかね(笑)

「そうですね(笑)。そういう車両もあったんですよ。すごくカッコ良かったんですけどねぇ」

500系

500系

Photo by: Motorsport.com / Japan

ーー500系は今も運用されているんですか?

「今は山陽新幹線で『こだま』として運用をしています。乗りたい方はぜひ山陽新幹線に(笑)」

ーーちなみに、鉄道好きには『乗り鉄』や『撮り鉄』、『音鉄』などといったジャンルがあるかと思いますが、松田さんの領域はどこになりますか?

「僕は乗り鉄や音鉄というよりも、古くなって走っている姿を見れなくなった車両を、Nゲージという模型で走らせることが好きですね」

ーーNゲージは名前こそよく聞くイメージですが、改めて『Nゲージとは何か』について説明をお願いします。

「ナインゲージ、つまり線路の幅が9mmなんですよね。その9mmの間を走らせる、ラジコンのような感じです。ただ、家では16両編成なんて走らせられないので、Nゲージを走らせられる模型屋さんに車両を持って行ったりしています」

「模型屋さんに行って、1時間貸し切って走らせたり、自分の車両を自慢したり(笑)。新幹線16両はすっごく長いですが、迫力がありますね。90年代や80年代の雰囲気を出すために0系と100系を走らせたり……逆に0系と最新の車両を走らせたり……そういう遊びをするのが好きですね」

ーー16両はかなり壮観でしょうね……! とはいえ、ご実家にも鉄道部屋があると聞きました。

「そうなんですよ。ただ、やはりそこではフル編成で走らせられません。長くて8両が限界です。なので在来線がメインですね。地元三重県を走っている近鉄の在来線を走らせたりしています」

ーーそれでも8両編成を走らせられるとはすごいですね。ぶっちゃけお金の方も結構かかったのではないですか?

「かかりましたね。僕はフォーミュラ・ニッポン(現スーパーフォーミュラ)でチャンピオンを獲りましたが、当時は年間チャンピオン賞金も良い時代だったので、そのご褒美として、子供の頃からやりたかったことを実現させました」

ーー鉄道模型はイジる時と走らせている時、どちらが楽しいですか?

「走らせている時ですね。イジるのは細かい作業が多くて、イライラするんですよ(笑)。僕は車内を実車同様に光らせるために、室内灯を入れるんですけど、その作業がめちゃくちゃ大変で。全部バラさないといけません。しかも1回1回電気がつくか大変で……」

ーー想像するだけでも大変そうですね……。では話は変わりますが、松田さんにとって思い入れのある車両ってあったりしますか?

「先ほども挙げた500系ですね。レーシングカーにすごく近い500系はどちらかというと居住性を犠牲にしている部分もある車両なので、好き嫌いも分かれると思います。荷物が上に乗らなかったり。狭かったり……確かに僕も荷物が多いときは不便でしたが、今でもカッコいいなと思います」

「僕がまだ三重県に住んでいた時、当時あったMINEサーキットに行く時は500系に乗ったりしていました。それまで100系ではすごく時間がかかっていたのが、300系、500系になるに連れて、すごく速くなりましたからね」

左から700系、300系、100系、0系

左から700系、300系、100系、0系

Photo by: Tsugio Matsuda

ーー300系、今日初めて名前が出る車両ですね。ちょっと調べますね……これですか。ちょっとお顔が特徴的というか(汗)

「鉄仮面みたいでしょ(笑)。でも300系の登場で280km/h運用になった訳です。そこから300km/hになっていくんです」

※300系は初代「のぞみ号」の車両。軽量化と空気抵抗の低減により営業速度向上を実現。

ーーここまでのお話で何度か、運用速度が上がっていったというお話が出ましたが、実際に乗客として乗って速度の違いを実感できたりするものですか?

「分かりますよ、やっぱり。それと乗り心地が違いますよね。300系は空力があまり良くなかったのでけっこう振られたりしていたし、コーナーは速度を落とさないといけませんでしたが、今の車両はカーブの時にアクティブサスペンションの要領で、コーナーに行くとわざと傾くようになっています。だからカーブも速いスピードで走れちゃうんですよ。それで東京-大阪間の移動時間を短縮できたんです」

ーーレーシングカーと同じく、そこには技術の進歩がある訳ですね。思い入れのある車両は500系とのことですが、逆にいつかは乗ってみたいという車両はありますか?

「寝台車両ですね。今はだいぶ数が減ってしまいましたが」

ーー岡山に取材に行く時、サンライズに乗ったことあります! とても快適だった記憶です。

「出雲の方行くやつですよね! いいですよね〜。夜中に走って朝起きてっていう、あの雰囲気が良いですよね。本当は『北斗星』とか『カシオペア』に乗りたかったんですけど、今までなかなか時間がなくて乗れずじまいで。その辺はもうなくなっちゃいました。『トワイライトエクスプレス』もなくなってしまいました。サンライズはまだ残ってるんでしたっけ?」

※カシオペアは現在、カシオペア紀行、カシオペアクルーズとして運行中。トワイライトエクスプレスは車両を換え、TWILIGHT EXPRESS 瑞風として運行中。

サンライズ瀬戸

サンライズ瀬戸

Photo by: Motorsport.com / Japan

ーー僕が乗ったのは2019年だったので、残っているはず……(※サンライズは出雲市行きのサンライズ出雲と高松行きのサンライズ瀬戸が運行中)

「じゃあ残ってるでしょうね。1回どこかで寝台列車を味わってみたいです」

ーー来年の岡山テストあたりでぜひ……!

「ですね。時間を忘れてゆっくりとね(笑)」

ーー話は変わりますが、松田さんは実際に鉄道車両を運転した経験があるらしいですね。

「三重テレビの番組の企画ですね。スーパーGTで連覇したご褒美で乗せてもらえたんです」

→当時のブログ

ーー実際に乗ってみていかがでしたか?

「クルマとは全然違うなと思いました。車両がすごく重くて、何十トンもあるやつを動かしたので」

ーー1両で何十トンもあると考えると、すごいですよね。

「そうです。ブレーキが効きづらくて……ブレーキのかけ方も難しいですね」

ーーレーシングドライバーは、マシンのブレーキを蹴るように踏むと言いますが、そういう訳にはいかないですよね。

「そうそう(笑)。こまか〜くかけていかないと。ギュっとかけたら人が倒れちゃうので、その辺りが大変でしたね」

ーードライバーを引退した後は、運転士に転身するというのはいかがですか?(笑)

「いや〜。でも鉄道の運転士の人に聞いたら、試験がものすごく難しいらしいです。だから電車に乗っている運転士の人は本当に頭が良くてすごい人たちらしいです」

Tsugio Matsuda, KCMG

Tsugio Matsuda, KCMG

Photo by: Masahide Kamio

ーーそろそろ締めに入りたいのですが、何しろ自分が鉄道に疎いもので、鉄道の魅力を引き出し切れたか心配です……松田さんとしてまだ話し足りていない部分があれば、ぜひ!

「レーシングカーも含めて、鉄道や乗り物って共有点があるんですよね。今はモノがあふれていて便利な時代ですが、昔は新幹線だって故障があったり乗り心地が悪かったりしました。それはレーシングカーも同じで、昔はしょっちゅう壊れてリタイアするマシンがいましたが、今はそういうケースがほとんど見られませんよね。どちらに関しても、そのくらい技術が進歩しているということです」

「今を当たり前だと思わずに、どうしてここまで進化したのかという部分を、もっとみんなに知ってもらいたいですね。そこを紐解くのが面白いです」

ーー確かに、僕たちが便利な時代を生きられているのも技術革新のおかげですから、それを忘れないようにしたいです。それでは最後の質問です。あなたにとって鉄道とは?

「大事な趣味の一環です。レースは仕事になっちゃってますからね。(鉄道を)好きにならなければ、クルマも好きにならなかったかもしれないし、飛行機も好きにならなかったかもしれない。そういう意味でも、大事な趣味ですね」

→記事の中で登場した鉄道車両の写真はこちら!

 
Read Also:

シェア
コメント
元WGPライダーの青木拓磨、GTワールドチャレンジ・アジアの富士ラウンドへ参戦
前の記事

元WGPライダーの青木拓磨、GTワールドチャレンジ・アジアの富士ラウンドへ参戦

次の記事

世界を目指せ……新生ホンダ・レーシング・スクール・鈴鹿-フォーミュラの修了式開催。4名がスカラシップ選考会へ

世界を目指せ……新生ホンダ・レーシング・スクール・鈴鹿-フォーミュラの修了式開催。4名がスカラシップ選考会へ