またしても無得点に終わった大湯都史樹。セットアップでのわずかな“攻め”がフロアを破壊……「レースは甘くない」とチーム代表

スーパーフォーミュラ第5戦SUGOで、ポールポジションを獲得しながらもリタイアに終わった大湯都史樹。レース途中から急激なペースダウンに見舞われた理由について、池田和広チーム代表が説明した。

Toshiki Oyu, TGM Grand Prix

 スーパーフォーミュラ随一のスピードスターは、またしてもチェッカーを受けることができなかった。

 スーパーフォーミュラ第5戦SUGOでポールポジションを獲得したのは、TGM Grand Prixの大湯都史樹だった。ポール獲得は今季2度目、予選2列目以内は4度目と、予選では圧倒的な速さを見せつけている大湯だが、第3戦からは接触により2戦連続リタイアと、決勝で結果を残せないレースが続いていた。今回こそはと意気込んだレースだったが、結果的にはまたしても噛み合わない1日となった。

 大湯はスタートで後続を抑えて首位を死守すると、その後は2番手以下を突き離すとはいかずとも、トップをキープしたままレース中盤に入ろうとしていた。

 しかし13周目に宮田莉朋(VANTELIN TEAM TOM’S)に先行されたあたりから、大湯のペースは急激に落ち始めた。14周目の1コーナーでは坪井翔(P.MU/CERUMO・INGING)とのバトルで大きく姿勢を乱し、接触は回避したもののグラベルまで飛び出して順位を落とした。

 その後も大湯は集団についていけないほどにペースが悪く、チームは原因を調査するために大湯をピットに呼び込んだ。しそして戦列に復帰することはできず、無念の3連続リタイアに終わった。

 チームは当初、オープニングラップで起きた接触の破片を踏んだ可能性を指摘していたが、大湯はタイヤ交換後もペースが上がらず「ダウンフォースが出ている感じがしない。リヤのグリップが薄い」と訴えていた。その後明らかになったところによると、大湯車のフロアには穴が空いてしまっていたようだ。

 これにはレースに向けて施したセットアップ変更も関係している様子。池田和広チーム代表がmotorsport.comにその背景を説明した。

 池田代表曰く、大湯のマシンは決勝日朝のフリー走行から狙っていたような領域にセットアップできず、大掛かりな変更を行なったという。その中で、決勝に向けてわずかに車高を下げたところ、それがフロアを傷付けてしまったようだ。

「かなりリヤを動かすセットアップにしたので、車高変化がかなり起こるクルマになっていました」

「それで8分間のウォームアップ走行で走行したところ、下面は全然擦っていなかったので、もう少しダウンフォースやトラクションが欲しいというドライバーのコメントを受けて、エンジニアが車高を少し下げました。結果的にはそれが良くなかったです」

「特に最終コーナーでは(フロアが底付きしたことで)煙が出ていたと思いますが、それが塵も積もれば……でフロアに穴が空いてしまいました。それでダウンフォースが出なくなり、タイムも出なくなったという形です」

 レース前の走行ではボトミングを避けられていた中で、ほんのわずかに車高を下げたことで、フロアにダメージを与える形となった大湯号。スポーツランドSUGOは、高速で大きく右に旋回しながら強烈なGを受ける最終コーナーを擁するが、今回これまでにない“柔らかさ”の足回りに仕上げたことで、未知の要素が重なってこのような結果に繋がってしまった可能性もあると池田代表は語る。

 

Photo by: Masahide Kamio

「“柔らかい”というのもそれぞれの基準によるので一概に言えず表現が難しいのですが、自分たちがタイヤをベストなところで使うには、最初に持ち込んだセットアップよりは(車両を)動かす必要がありました」

「予選一発では“硬い”ものでも良かったのですが、決勝は予選セットアップのアジャスト程度ではグリップがなくなった時に耐えられません。だから(コーナリングの際に車両を)揺らしてあげて、タイヤをうまく使えるようにしないといけません。ただ最終コーナーで揺れた時にフロアの角が擦れてしまい、穴が空いてしまいました」

「決勝向けセットアップが朝の段階で決まっていれば良かったのですが、8分間での微調整があまりうまくいかなかったのが敗因です。もう少しケアできれば……と思いますが、攻めすぎた結果です」

「無難に走ることもできましたし、8分間では『これなら勝負できる』という感覚もありましたが、より安心を求めるためにダウンフォースを取りにいった結果、フロアを削ってしまいました」

 今回も流れが噛み合わないレースになってしまった大湯。池田代表は残りのレースでなんとかチャンスを手繰り寄せ、波に乗りたいと語った。

「レースペースが悪かったわけではありませんが、もったいなかったです。レースは甘くないですね」

「このポジションに付けられていれば、いつかはチャンスがやって来ると思います。1回勝ってしまえば、その波に乗れると思うので」

 
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