ホンダのF1撤退で大打撃。”振り出し”に戻ったレッドブルの将来はどうなる?
ホンダは、2021年限りでF1から撤退することを発表した。これにより、パワーユニットの供給を受けていたレッドブル、アルファタウリにはどんな影響が生じるのだろうか。
写真:: Glenn Dunbar / Motorsport Images
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2015年からパワーユニット(PU)のマニュファクチャラーとしてF1に参戦していたホンダは、2021年限りで活動を終了すると発表した。この衝撃的な発表により、F1に残るPUマニュファクチャラーはフェラーリ、メルセデス、ルノーの3メーカーのみとなった。これは現行のPUレギュレーションが導入された2014年以来、最も低い数となる。
ホンダは参戦終了を発表した記者会見で、F1からの撤退を検討していることを8月の時点でレッドブルに伝えたと明かし、9月末の時点で活動終了を最終決定したと明かしている。
ホンダの撤退により、レッドブルおよび姉妹チームのアルファタウリは、来年末までに新たなPUサプライヤーを見つける必要があるが、その選択肢は非常に限られている。新たなサプライヤーが参入しない限り、レッドブルは現在享受しているワークスチーム相当の待遇を失うことになるのだ。
2018年にスタートしたホンダとレッドブルのパートナーシップは、おおよそ成功していたと言っていいだろう。お互いに以前のパートナーと比べて、はるかに良い関係を築いていたからだ。
ホンダがF1に復帰した当初のパートナーであるマクラーレンとの関係は物別れに終わったし、レッドブルはルノーからのサポートが不足していると感じていたのだ。
ホンダがレッドブルにPU供給を開始した初年度である2019年に、マックス・フェルスタッペン(レッドブル)が3勝を挙げ、2020年はメルセデス勢に対抗できる唯一のドライバーとなっている。時折不満を見せることはあるが、ルノーと組んでいた時のように常日頃からPUの性能不足が争点になることもなかった。
ホンダはレッドブルに絶対的なサポートを提供し、レッドブルはこれまで以上にタイトル獲得という目標に向けて、態勢を整えつつあるように見えた。
しかしホンダの撤退で、レッドブルは振り出しに戻ってしまった。ホンダは2021年に向けて新型PUを開発し、レッドブルとアルファタウリと共に最後まで戦うと主張しているものの、それ以降のレッドブルの状況は不透明だ。
現行のサプライヤーと契約した場合、メルセデスやフェラーリを相手に優勝やタイトルを争うために、サプライヤーから優先的な地位を与えられることもない……サプライヤーにとってのパートナー、あるいはただのカスタマーという扱いに戻る可能性が高いだろう。そういった立場で成功を収めるのがいかに難しいか、ルノー時代に嫌というほど体験してきた。
ホンダは、レッドブルとアルファタウリを対等に扱ってきた。いわばどちらもワークスチーム扱いだったわけだが、今後はそうはいかないだろう。
レッドブルが8月中旬にコンコルド協定にサインした時点で、ホンダが撤退する可能性については認識していただろう。そしてコンコルド協定に署名することで、5年間のF1参戦義務が生じている。
レッドブルのクリスチャン・ホーナー代表は、ホンダの撤退に際し次のように語った。
「最新のコンコルド協定署名者として、レッドブル・レーシングは長期的にこのスポーツへコミットしており、イノベーションや開発、成功の新時代へと漕ぎ出すことを楽しみにしている」
「グループとして、我々は2022年以降に最も競争力のあるパワーユニットを評価し、見つけるために、時間を使っていくことになるだろう」
レッドブルは、異なるPUメーカーでも勝てることを証明してきた。過去10年間で、複数のエンジンパートナーと共に勝利した唯一のチームであり、それを念頭に置いて今後に備えることになるだろう。
Max Verstappen, Red Bull Racing RB16, Esteban Ocon, Renault F1 Team R.S.20, and Daniel Ricciardo, Renault F1 Team R.S.20
Photo by: Andy Hone / Motorsport Images
レッドブルにどんな解決策があるかは不透明だ。メルセデスはすでにワークスチームに加えて、レーシングポイント(アストンマーチン)、ウイリアムズ、マクラーレンにもPUを供給する予定となっている。フェラーリはハース、アルファロメオと協力関係を築いている。
皮肉なことに、来年からカスタマーチームへのPU供給がなくなり、手が空くのはかつてのパートナーであるルノーだ。ルノーは2021年から、アルピーヌへとブランドを変更する自社チームへとPUを供給することになっている。一方、マネージングディレクターのシリル・アビテブールは以前、パートナーとの提携も視野に入れていると述べていた。ただし、それはルノーにとって価値をもたらすような関係でなければならないという。
「カスタマーチームというよりも、パートナーチームでなければならない」
アビテブールは、アルピーヌへのブランド変更を発表したモンツァでそう語った。
「カスタマーは何ももたらさない。しかしパートナーは、スポーツとしての目標や、ビジネス的な目標の達成に役立つ、何らかの価値をもたらすことができるかもしれない」
レッドブルとのパートナーシップ再締結の可能性について訊かれたアビテブールは、「私はレッドブルと再び話をしていると捉えられたくはない」と語った。
「レッドブルはホンダのワークスチームだ。まずはホンダが、このスポーツにおけるこの戦略を決めるべきだと思う」
「我々はレッドブルと一緒にやっていたが、うまくいかなかった。なぜレッドブルとうまくいかなかったのかということについて、疑問があったかと思う。私の考えでは、ヴィリーやエンストン(共にルノーの拠点)で進められた統合の結果、生まれた可能性を彼らが拒否したことがその理由のひとつだと思う」
「強力なパートナーシップを結ぶチャンスがあれば、我々はそうするだろう。その相手がレッドブルになるかどうかは疑わしいがね」
しかし競技規則によって、レッドブルはルノーPUを使用することになるかもしれない。レッドブルがルノーに不満を抱き、新たなPUサプライヤーを探そうとしたものの見つからなかったことが発端となり、ルールが調整されたのだ。
PUが未定のチームが存在する場合に、FIAが『供給チーム数が最も少ないマニュファクチャラー』を対象に、PU供給を義務付けることができるようになったのだ。
レッドブルは2021年8月1日までにFIAにPU供給の要請を出すことができる。もしこれが申請されれば、現在のレギュレーションに基づき、ルノーはその要請に応じる義務を負う。ただレッドブルにとって、これは最後の手段となるだろう。チームは決断を下す前にメルセデスとフェラーリとの話し合いを含めてあらゆる手段を模索したいと考えているはずだ。
またレッドブルで史上最年少チャンピオンを獲得することを狙っていた、世代随一の才能を持つフェルスタッペンの未来にとって、ホンダの撤退がどんな意味を持つのかという疑問もある。
現在23歳のフェルスタッペンにとって、セバスチャン・ベッテルが持つ最年少チャンピオン記録(23歳134日)の更新は今年がラストチャンスだった。しかし今季もメルセデス勢が他を圧倒。フェルスタッペン自身は際立ったパフォーマンスを見せているものの、マシンのパフォーマンスはメルセデスに遅れを取っており、記録の更新は絶望的だ。
レッドブルはホンダ撤退後の将来像を明らかにし、フェルスタッペンがチャンピオンを目指す上でレッドブルが最善のチームだと納得させるため、懸命に努力する必要があるだろう。
2022年の新レギュレーション導入を前に、新たなパートナーを見つけ、それが機能するようにしなければならない。次のステップがどうであれ、これはレッドブルにとっては大きな後退だ。ホンダとのパートナーシップは完璧にフィットしているように見えたが、それが結実し、メルセデスの宿敵となるのが遅すぎたのかもしれない。
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